(2022/12/9 05:00)
2023年の日本経済が内需主導の成長を目指すには、賃上げを起点とした経済の好循環を回す必要がある。経団連の十倉雅和会長は7日の会見で23年春闘について、22年の実績を「超えなければならない」と語り、会員企業に強く賃上げを促す方針を示した。連合は5%以上の高い春闘要求方針を決めている。業績堅調な大企業による意欲的な賃上げが中小企業にも波及するよう、適正な価格転嫁も併せて実行するよう求めたい。
厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、物価変動の影響を勘案した実質賃金は前年同月比2・6%減と7カ月連続で減少し、賃上げが物価上昇に追い付いていない。10月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比3・6%上昇と40年8カ月ぶりの上昇率を示していた。
実質賃金の低下は個人消費に影響し、内閣府の11月調査では消費者マインドが3カ月連続で低下し、基調判断は「弱まっている」と黄信号がともる。23年は世界経済の減速が予測されるだけに、内需主導の成長を実現する上で賃上げが欠かせない。
22年春闘は、連合によると平均賃上げ率は前年比2・07%上昇し、3年ぶりに2%台を回復した。経団連の加盟135社は同2・27%上昇と4年ぶりに上昇しており、この勢いを加速したい。財務省によると、7―9月期の全産業の経常利益は前年同月比18・3%増と大幅に増えており、この期では過去最高を更新している。賃金への利益還元を進めつつ、下請け企業が物価上昇分を価格転嫁できる取引適正化を推進していきたい。
23年の消費者物価指数について、日銀の黒田東彦総裁は2%を割り込むと読み、岸田文雄首相は23年春闘で3%を超す上昇率となることに期待を寄せる。
政府は短期的には23年春闘で賃上げを促し、中長期的には学び直しなどで企業の生産性を高め、さらなる賃上げにつながる好循環の実現を後押しする。連合によると、日本の賃金は「97年の水準を回復していない」という。長期にわたって沈んでいる賃金の本格的な上昇に向け、23年春闘をその起点としたい。
(2022/12/9 05:00)
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