社説/米欧、週内に金融会合(下)ドル高一服も利上げ長期に懸念

(2022/12/14 05:00)

ドル高が一服し、日本や新興国へのプラスの効果を期待したい。米国が利上げ幅の縮小を視野に入れたことで日本と新興国は自国通貨安が是正され、輸入物価の上昇が抑制される。実質賃金の上昇が個人消費の喚起につながる好循環を回したい。中でも新興国は、通貨防衛のための利上げが経済を減速させてきたが、そのリスクを回避できる。ただ米国のインフレ率は依然高い。小幅な利上げが長期化し世界経済に影響を及ぼしかねないことを留意しておきたい。

10月に一時、1ドル=151円台まで加速した円安は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ幅の縮小を検討し始めたことで、足元では同137円台の円高で推移している。日銀によると11月の企業物価指数は前年同月比9・3%上昇し、8カ月連続で過去最高を更新した。円安と高原状態のエネルギー価格により押し上げられた物価が、円安是正によって徐々に緩和される効果が期待される。

新興国にとってもドル高是正は景気に追い風だ。ドル高は自国通貨安と資金流出を引き起こし、これまでに行った通貨防衛の利上げが自国経済を減速させてきた。ドル建て債務の金利上昇も新興国の企業には大きな重荷となっていた。ドル高是正でこれらのリスクが後退し、新興国には資金が回帰している。

ただ米国が利上げ幅を縮小しても、小幅な利上げが長期化する懸念がある。米国では人手不足による賃金の上昇圧力が根強く、インフレ退治の金融引き締めの出口は見通しにくい。米国の金融政策に左右される危うさは今後も続くと留意したい。

東京商工リサーチによると、日本の上場メーカーは2023年3月期の下期の想定為替レートを1ドル=135・3円に設定し、期初の同119・1円から大幅に円安方向に修正した。だが想定外に円高が進み、想定レートと実勢レートがほぼ同水準に。為替差損が視野に入るほど円高が進むのか気がかりだ。市場では米国の金融引き締め長期化を見据え、緩やかな円高で推移するとの見方が多い。為替相場を引き続き注視したい。

(2022/12/14 05:00)

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