(2022/12/27 05:00)
予備費は支出決定のたびに従来以上の内容説明を求めたい。
政府の2023年度予算案は、子ども政策の充実やデジタル田園都市国家構想、GX(グリーン・トランスフォーメーション)などを重点項目として掲げた。だが実際には一般歳出の増分の大半は防衛関係費と社会保障関係費で占められた。
こうした窮屈な予算の中で、異色なのは予備費である。22年度予算では「新型コロナウイルス感染症対策及び原油価格・物価高騰予備費」として5兆円を計上していた。23年度予算案はこれを4兆円に減らしてはいるものの、一方で「ウクライナ情勢経済緊急対応予備費」を1兆円規模で新設している。
政府予算の本来の予備費は5000億円。衆院の解散・総選挙や自然災害の被災地支援などを想定する。3500億円規模の時代が長く、19年度に5000億円に増額した。この10倍に当たる5兆円の予備費はコロナ禍が始まった21年度に新設したもので、3年連続となる。
予備費は閣議決定だけで支出できる。国会審議が必要な補正予算に比べて使いやすい。「非常時に機動性の高い執行が必要だ」と財務省は説明する。
しかし政府予算の一般歳出のうち、1割近くが予備費という状況が3年も続くことは、予算執行の不透明さにつながりかねない。リーマン・ショックに揺れた09年度予算に「経済緊急対応予備費」を計上した前例があるが、その規模は1兆円だった。コロナ禍が落ち着きを見せる中で、5兆円もの予備費を継続する理由はあらためて問わなければならないだろう。
むろん政府の機動的な経済政策には期待したい。しかし予備費が安易な“バラマキ”型の給付金などの財源になることは許されない。また予備費の使い残しも増大するため、翌年度の財政当局の予算裁量範囲は拡大する。経費別の予算額の増減では政府の方針が見えにくくなる。
予備費の支出決定について十分に国民に説明すること。そして24年度以降に巨額予備費を収束させていくこと。これが政府に課せられた使命である。
(2022/12/27 05:00)
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