産業春秋/百貨店にみる時代の終わり

(2023/1/25 05:00)

一つの時代の終わりを実感させる。そんな出来事が続く。東急百貨店本店(東京・渋谷)は31日、55年の歴史に幕を閉じ、3月中には、そごう・西武がセブン&アイ・ホールディングスから米投資ファンドに売却される。

とりわけ東急本店は複合文化施設「Bunkamura」を併設し、東急グループの文化戦略を担ってきたが、その施設も今春から大規模改修に入る。東急は「グループの文化事業のけん引役としての活動は継続する」としているが、詳細はまだ明らかになっていない。

「発生期の百貨店抜きにしてモダニズムは語れない」。文化人類学者の山口昌男氏はこう記している。確かにかつての百貨店はハード、ソフト両面で斬新な経営を競い合い、消費者にとっては非日常の象徴であった。

近代百貨店の誕生から間もなく120年。流通構造は大きく変わった。消費者の低価格志向やネット通販の台頭。ライフスタイルは多様化し、消費者が抱く「憧れ」や「新しさ」の形は多様化する。

百貨店の閉鎖が続く一方でアウトレットの開業や規模拡大は相次ぐ。流通の王者として君臨した百貨店はどのようなビジネスモデルで輝きを取り戻すのか。その姿はまだ見えない。

(2023/1/25 05:00)

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