(2023/3/3 05:00)
中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が5日開幕する。3期目の国家主席に任命される習近平総書記への権力集中が一段と鮮明になる。だが習氏は対米関係の悪化や少子化の進行、地方経済の疲弊などの内憂外患を抱える。足元の中国景気はゼロコロナ政策の解除で回復傾向にあるが、地域や業種に温度差があり、先行きには不透明感が残る。習氏への集権で内憂外患を癒やすことはできるのか、注視していきたい。
全人代は国家主席や首相らを任命する人事案、政府と共産党の機能統合を進める機構改革案、さらに2023年の経済目標などが示される。22年10月の中国共産党全国代表大会で異例の総書記3期目入りを確定した習氏は国家主席も3選され、首相には習氏側近の李強氏が就く見通しだ。共産党と政府との機能の統合も進めることが想定され、習氏の個人支配が強まる体制が整う。習氏の独善的な政策が暴走しないか警戒したい。
23年の経済目標は、実質成長率を5―6%に設定するとみられる。国際通貨基金(IMF)は22年に3・0%だった中国の実質成長率が5・2%に回復するとみる。ゼロコロナ政策の解除により2月の製造業・非製造業の購買担当者景気指数(PMI)は56・4と、1月の52・9を上回った。ただサービス消費が回復した一方、減税が終わった自動車販売や住宅販売が停滞し本格回復には至っていない。
中国はゼロコロナ政策下、大量のPCR検査を行った地方財政が疲弊。22年末には「一人っ子政策」などの影響で人口が61年ぶりに減少に転じた。格差是正の「共同富裕」や人口減が中国経済の成長を中長期で鈍化させかねない。対米関係も悪化する中、全人代でどのような経済方針が示されるか注目したい。
他方、中国はウクライナ情勢でロシアへの経済制裁の抜け道となり、軍事支援も取りざたされる。ロシア支援や台湾有事が世界に認識されている限り、供給網での脱・中国の動きは加速する。安定的な経済成長を目指す新体制の習政権は、そのことこそ肝に銘じてもらいたい。
(2023/3/3 05:00)