(2023/5/2 05:00)
米連邦準備制度理事会(FRB)は2、3の両日(現地時間)に開く会合で、政策金利を0・25%引き上げると市場関係者の多くが予測する。焦点は、これを最後に利上げを停止するかどうかだ。インフレは高水準ながら改善傾向にある。加えて懸案の金融不安は沈静化しておらず、6月以降も利上げを継続すれば金融機関の経営はさらに悪化し、預金流出や銀行の“貸し渋り”が米国経済を冷やしかねない。米国は年内に景気後退に転じるとの見方も根強く、米FRBの判断を注視したい。
米国の3月の消費者物価指数は前年同月比5%の上昇で、2月の6%上昇から改善した。ただ米FRBの長期的な目標である2%にはほど遠く、賃金の上昇も継続している。1―3月期の雇用コスト指数は前期比1・2%上昇し、市場予測を上回った。労働市場が逼迫(ひっぱく)し、大幅な賃上げによるインフレ圧力が強いことを意味しており、今会合での利上げは適切な措置だ。
一方、巨額の預金が流出していた米中堅銀行のファースト・リパブリック銀行は1日、経営破綻し、公的管理下に置かれた。米国での金融不安の再燃が懸念される。加えて、米国の1―3月期の実質国内総生産(GDP)成長率が年率換算でプラス1・1%に鈍化し、市場予測のプラス2%を下回った。個人消費は堅調ながら、金融不安への懸念から設備投資が前期比0・7%増(前期は4・0%増)、住宅投資が同4・2%減(前期は25・1%減)と落ち込んでいることに留意する必要がある。
米FRBが今会合で0・25%の利上げを決定すれば、政策金利の誘導目標の上限値は5・25%となり、当初見込んでいた年末の5・1%を上回る。これを最後に利上げを停止するとの見方が多いのはそのためだ。
仮に6月以降も利上げを継続すれば、米銀行が持つ債券の含み損が膨らむほか、自己資本比率の改善に向けた信用収縮がさらに広がり、景気後退に陥りかねない。米FRBは金融不安とインフレの双方をいかに抑えるか、世界経済に影響するだけに慎重な政策運営を求めたい。
(2023/5/2 05:00)