社説/日米欧の金融政策(下)ECB利上げ、円安の行方警戒

(2023/5/3 05:00)

欧州中央銀行(ECB)は4日(現地時間)の会合で政策金利を引き上げる見通しだ。米国よりも深刻なインフレを抑制するため、0・25%の利上げを予測する市場関係者が多い。ただユーロ圏の景気回復力は緩やかで、利上げに伴う金融機関の収益悪化も懸念される。政策金利は今回の利上げで経済成長を制約する水準に達する見通しで、利上げ停止時期を注視したい。

ECBは政策金利を0・25%引き上げ、3・25%になるとの見方が多い。0・5%の引き上げ幅を予測する向きもある。利上げは7会合連続。ユーロ圏の3月の消費者物価指数が前年同月比6・9%上昇と、前月の8・5%上昇から改善したが依然高水準にある。米国(3月は5・0%上昇)よりインフレは深刻で、利上げ判断は適切だ。

ユーロ圏は暖冬によるエネルギー消費の減少とエネルギー価格の低下、さらに中国経済の再開を受け、企業収益が回復している。ただ収益の回復が賃上げを誘い、物価はコスト上昇分以上に高騰しているという。

ユーロ圏の1―3月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は前期比0・1%増とプラスを維持して景気後退を回避した。ただ回復は緩やかで、ECBの利上げが経済に及ぼす影響が懸念される。欧州金融機関は預金金利の上昇による収益悪化が想定され、融資の厳格化が企業の設備投資に影響しかねない。

ECBがどのタイミングで利上げを停止するかが大きな焦点になる。市場では5、6、7月に政策金利を0・25%ずつ引き上げるのを最後に停止するとの見方が有力だ。インフレと景気両にらみの判断が求められる。

欧米が5月会合で政策金利を引き上げる見通しの中、日銀の植田和男総裁は大規模金融緩和の継続を表明した。欧米との金利差が意識され、円は対ユーロとドルで売られやすい地合いが続く。円安は輸出やインバウンド(訪日外国人)需要に有利に作用する一方、輸入物価を押し上げる。日本は金融緩和の副作用を検証しつつ、円の競争力を引き上げる構造改革を推進し、為替の安定化を目指したい。

(2023/5/3 05:00)

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