社説/日韓首脳会談 安保・経済で一段の関係深化を

(2023/5/5 05:00)

岸田文雄首相は7、8の両日に韓国を訪問し、7日に尹錫悦(ユンソンニョル)大統領との首脳会談に臨む。両首脳が互いに相手国を訪問する「シャトル外交」再開の一環となる。安全保障と経済の両面で正常化に向かう両国関係をさらに深めたい。19日に開幕する主要7カ国(G7)広島サミットに尹大統領も招待する。日韓および日米韓の連携を一段と強化し、東アジアの安全保障と国際秩序の維持を主導したい。

岸田首相の訪韓は首相就任以来初めてになる。韓国政府が元徴用工訴訟問題で前向きな解決策を日本政府に提示したことで、両国関係は一気に改善に向かった。3月に都内で開いた日韓首脳会談では約12年ぶりのシャトル外交の再開を決めたほか、韓国が秘密軍事情報を日本と共有する軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の正常化でも合意した。北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返す中、ともに米国との同盟国である日韓が関係を改善し、東アジア安保で連携を強化する意義は大きい。

バイデン米大統領は、韓国が元徴用工問題で歩み寄り、日本との関係改善を進めたことを評価。4月末の米韓首脳会談では「核の傘」を含む拡大抑止の強化を表明した。北朝鮮による韓国への核攻撃を抑止すると同時に、韓国内にくすぶる核武装論を抑える効果が期待される。

日韓両政府は貿易も正常化する。日本政府は2019年、元徴用工問題に対する事実上の報復措置として、輸出管理手続きを簡素化する「グループA(ホワイト国)」から韓国を外し、韓国も同様の措置を講じていた。元徴用工問題が前進し、4月には韓国に続いて日本もホワイト国への再指定を決めている。半導体を含む供給網の強靱(きょうじん)化などを通じ、両国は経済正常化の歩みを進めていきたい。

韓国は尹大統領が22年5月に就任し、5年ぶりの保守政権になったことで対日、対北朝鮮戦略が大きく転換した。尹大統領も招く19日からのG7広島サミットでは、議長の岸田首相が中ロと北朝鮮を念頭に、民主主義陣営の結束の強化を世界に力強く発信してもらいたい。

(2023/5/5 05:00)

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