(2023/5/26 05:00)
民間金融機関から借りた実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が7月から本格化する。物価高、人手不足に直面する中小企業にとって経営の一段の悪化が懸念される。同融資によりコロナ禍の下で“延命”してきた企業は別として、この機を収益基盤強化や事業再構築につなげることが求められる。
ゼロゼロ融資は融資開始から実質3年は都道府県が利子を補給し、元本は最長5年支払いが猶予される。政府系金融機関を含む融資実績は約42兆円に達し民間金融機関が過半を占める。
2020年5月に開始した民間金融機関によるゼロゼロ融資の利払いが7月から24年4月に集中する。信用保証協会が元本保証するため、金融機関はリスクを考慮せずに積極融資し、中小企業はコロナ禍の長期化で過剰債務に陥った。21年の倒産件数が57年ぶりの低水準となる成果を上げた一方、本来なら事業継続できない企業まで延命させたモラルハザード(倫理観の欠如)を招いた感は否めない。
国際決済銀行(BIS)は、利払い負担に対する利益の比率が3年連続で1未満の企業などを“ゾンビ企業”と定義する。帝国データバンクによると、21年度の国内の同企業は18万8000社に達し、約8割がコロナ関連融資を受けているという。コロナ関連倒産は23年4月まで4カ月連続で40件を超え、じわり増えてきた。ゼロゼロ融資の過剰債務を抱え、事業継続をあきらめる廃業・倒産が大幅に増加する可能性に警戒したい。
自主再生が可能な企業は、経済産業省・中小企業庁が1月に始めた借り換え保証制度(コロナ借換保証)などの活用を検討したい。保証限度は民間ゼロゼロ融資の上限を上回る1億円。保証期間は10年以内で、据え置き期間は5年以内。借り換えのほか事業再構築など前向きな資金需要にも応じるという。
日本の企業数の99・7%を占め、従業員数も全体の7割を占める中小企業。ゼロゼロ融資に加え物価高、人手不足など課題が山積する。中小の市場退場は供給網に影響を及ぼすだけに多くの企業が軟着陸してほしい。
(2023/5/26 05:00)
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