(2023/5/29 05:00)
米国主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚会合が27日(現地時間)に米デトロイトで開かれ、中国依存を低下するためのサプライチェーン(供給網)を強化する協定を結ぶことで合意した。IPEFが2022年5月に発足して以来、初の成果を上げたと評価したい。
ただ、IPEF参加国の中には政治的に中立な国も少なくない。供給網はデカップリング(分断)でなくデリスキング(リスク低減)との共通認識の下、参加各国の結束を強めつつ、中国とは経済安保を除く分野で協力関係を維持していきたい。
IPEFには日米と韓国、豪州、ニュージーランド、インド、フィジー、さらに東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国のうち7カ国の計14カ国が参加する。米労働者が反発する関税引き下げなどの市場アクセスを含まず、経済圏として魅力に乏しいとの指摘もあるが、経済安保の観点では貿易の価値観は低コストから安定調達に移行している。台湾有事などを見据え、半導体や重要鉱物を融通し合う体制を早期に整えたい。
IPEFの何カ国が供給網に参加するかが今後の焦点だ。IPEFは貿易、供給網、脱炭素、反汚職の4分野から成り、14カ国は参加する分野を選択できる。経済安保の実現に向け多くの国の参加に期待したい。
岸田文雄首相は先進7カ国(G7)サミット前の18日、海外半導体メーカー7社と面会し、対日投資を促したほか、日米両政府は26日、次世代半導体の技術開発などの行程表の策定でも合意した。IPEFの供給網強化と合わせ、半導体の安定供給体制づくりを急ぎたい。
半導体をめぐる中国との対立激化が懸念される。米国の対中輸出規制と歩調を合わせ、日本は7月から先端半導体の製造装置など23品目の輸出を厳格化し、オランダも同調する。中国は米マイクロン・テクノロジー製品の輸入を情報インフラ産業で禁止するなど報復を表明している。中国とは「対立」と「協力」を使い分ける、したたかな外交が一層求められてくる。
(2023/5/29 05:00)
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