(2023/6/5 05:00)
米連邦準備制度理事会(FRB)が13、14の両日に開く会合で、政策金利の引き上げを一時停止するかを注視したい。5月の雇用統計で平均時給の伸びが鈍化しているのを追い風に、利上げをいったん停止し、金融と景気に配慮するとの見方が金融市場で有力だ。ただ一方でインフレの長期化が懸念されており、7月以降に利上げを再開すると市場は警戒する。政策金利の最終到達点が想定を上回って高止まりし、米国経済が後退局面に入る可能性に留意したい。
米FRBは前回5月の会合で0・25%の利上げを決め、政策金利の誘導目標の上限が5・25%となった。当初見込んでいた年末の5・1%を上回る高水準に達しており、米FRBはこの5月を最後にいったん利上げを停止する可能性を示唆していた。米金融機関は金融不安への懸念から融資を厳格化しており、6月以降も利上げを継続すれば企業の資金需要がさらに減少し、景気が後退しかねない。
5月の米雇用統計によると、平均時給は前月比0・3%上昇と、4月の0・5%上昇から鈍化しており、インフレ抑制の利上げを停止しやすいと市場は受け止めている。ただ5月の非農業部門雇用者数が前月比で33・9万人も増え、市場予測の19万人増を大幅に上回った。人手不足を背景に、賃金上昇とインフレが長期化しかねないことも市場で意識されている。米FRBが6月会合で利上げを停止しても「一時的」と捉えるべきだ。
国際通貨基金(IMF)は2023年の米国の実質成長率を1・7%(4月時点の予測は1・6%)に上方修正し、堅調な経済を背景に利上げによるインフレ抑制の必要性を指摘する。米FRBはインフレを抑制しつつ、いかに金融不安と景気後退のリスクを拭うのか、難しい局面を迎えつつあると言える。
バイデン米大統領は米国債のデフォルト(債務不履行)を回避するため、野党・共和党が求めた歳出削減に応じた。経済危機は回避したが、民主党は景気対策の財政出動を講じにくい。米FRBにはこれまで以上に慎重な政策運営が求められる。
(2023/6/5 05:00)