(2023/6/29 05:00)
東京証券取引所に上場する3月期決算企業の株主総会が29日にピークを迎え、30日に全2277社の総会が終了する。29日は595社、全体の26・1%が開催する。一連の総会で企業の課題が浮かび上がる。企業は目の前の株主への利益還元にとどまらず、従業員や取引先などの幅広いステークホルダー(利害関係者)にも目配りし、中長期の成長投資を通じて株式価値を向上させることが求められる。
今総会の特徴の一つは、株主提案が過去最多の90社程度に達したことだろう。アクティビスト(物言う株主)や機関投資家が自社株買い・増配などの株主還元や取締役の選任、脱炭素への対策強化などの提案を増やした。このうち自社株買いは総会を待たずに表明した企業も多く、バブル後最高値をうかがう株高を誘発する一因となった。
企業や株主が自社株買いに目を向けるのは、東京証券取引所が上場企業に株式価値の向上を求めたことが背景にある。株価が企業価値より割安の場合、株価純資産倍率(PBR)が1倍を割る。東証は1倍割れの是正を求め、海外に見劣りする日本株の魅力を向上させる狙いを込める。考え方は適切だが、自社株買いによるPBRと株価への効果は短期にとどまる可能性があることには留意したい。
企業はPBRの本質的な改善に向け、「人への投資」や成長分野への積極的な資金投入、低採算事業の見直しなどを中長期で取り組む戦略を株主に訴え、持続的な成長軌道を描きたい。
東証が22年4月に市場再編された際、基準に満たない300社近くを最上位のプライム市場銘柄とする経過措置を講じていた。この措置は25年3月以降に終了する方針だ。上場に値するPBR1倍以上を長く維持する上でも、対処療法の施策は限定的な範囲にとどめたい。
株主提案は、多数の議決権を握る会社側に否決される事例が圧倒的だが、影響力は増しつつある。取締役選任議案で賛成比率が22年より低下した事例などが散見された。自社の経営戦略を株主に明確に伝える対話も企業は継続する必要がある。
(2023/6/29 05:00)
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