(2023/7/27 05:00)
国際通貨基金(IMF)は、2023年と24年の世界の実質成長率をともに3・0%と見通す。00―19年の平均3・8%を大幅に下回り、IMFは「歴史的な水準に照らすと依然低迷したまま」だと警戒する。
インフレ率の高止まり、長引く米欧の金融引き締め、中国経済の減速が世界の成長を鈍らせる。中でも懸念される中国は消費喚起や住宅市場への支援強化の方針を示しており、踏み込んだ対策となるか注視したい。日本も内需主導の成長を確実に実現することが求められる。
23年の世界の実質成長率は前回4月の予測から0・2ポイント上方修正した。ただ22年の3・5%を下回る低水準である。
23年の成長率を国・地域別で見ると、米国が4月の予測より0・2ポイント増の1・8%、ユーロ圏が0・1ポイント増の0・9%、日本も0・1ポイント増の1・4%に上方修正された。エネルギー価格の上昇が一服し、米欧の金融リスクも抑制された影響が大きい。日本はコロナ禍の行動規制が緩和され、消費の反動増やインバウンド(訪日外国人)の増加が上方修正につながった。
ただ中国は4月予測を据え置き5・2%。国内総生産(GDP)の3割を占める不動産関連など内需の停滞が懸念される。
世界のインフレ率が高止まり状態なのも心配だ。22年が8・7%、23年が6・8%、24年5・2%と緩やかなペースでの鈍化を見込む。17―19年の約3・5%と比べて高止まりが継続すると覚悟したい。
日米中の24年成長率が23年を下回ることも気がかりだ。日米は1・0%、中国は4・5%と目標の5%前後を下回る。中国共産党は24日の中央政治局会議で国内需要の不足に警戒感を示し、消費拡大や住宅産業への支援策を講じる方針を明かした。ただ中国は不動産投機を抑制してきただけに大規模な景気刺激には慎重だ。打ち出される対策の効果を見極めたい。
日本は堅調な23年春闘を追い風に、賃上げと個人消費の増加を起点とした内需拡大の好循環を回したい。政府には物価への十分な目配りが求められる。
(2023/7/27 05:00)