(2023/8/7 05:00)
2023年4―6月期決算が総じて堅調だ。コロナ禍の行動制限が緩和され、経済活動が本格的に再開したことをうかがわせる。製造業は円安効果もあって自動車などが好業績をけん引し、非製造業も消費・サービス需要の回復が業績に反映されてきた。ただ製造業では、23年度の想定為替レートを足元より大幅な円高に設定するなど先行きを警戒する。減速する世界経済や為替動向には留意したい。
SMBC日興証券のデータによると、3日までに決算を開示した企業のうち、613社の4―6月期の当期利益は前期比23・1%増、非製造業(金融を除く)を含む全産業は同17・2%増だった。決算発表は下旬にピークを迎えるが、堅調な企業業績の傾向が浮かび上がった。
製造業では、完成車メーカーが輸出に有利な円安基調と半導体不足の改善により生産・販売が増え、トヨタ自動車と三菱自動車は4―6月期としては売上高と各利益が過去最高を更新。日産自動車やスズキも大幅な増収増益。自動車関連が製造業の堅調な業績をけん引する。
ただ石油化学・半導体関連の需要が伸び悩んだ総合化学や、スマートフォン出荷低迷の影響を受けた電子部品などで減収減益が相次ぐなど、業種で温度差があったことが懸念される。
非製造業はコロナ禍からの経済再開やインバウンド(訪日外国人)需要の回復が奏功。日本航空(JAL)は4―6月期としては4年ぶりに当期損益が黒字化し、日本郵船など海運3社も円安や堅調な自動車輸送などで24年3月期の経常利益を上方修正した。三越伊勢丹ホールディングスの4―6月期は売上高・当期利益が2ケタ台の大幅な伸びだった。堅調な春闘での賃上げや、訪日を促す円安基調を背景に好業績を維持したい。
製造業を中心に、24年3月期の想定為替レートを1ドル=130円台前半に設定した企業が多い。先週末の同141円台より大幅な円高の設定だ。ただ日銀による長期金利の上限引き上げも極端な円高を市場は織り込んでいない。通期も円安基調で業績が上振れるか注視したい。
(2023/8/7 05:00)