(2023/8/16 05:00)
物価上昇が懸念される。原油高と円安が輸入物価を押し上げるだけではない。政府による電気・ガスなどの価格抑制策(激変緩和措置)が9月末で終了する。賃上げが物価高に追い付かない中、国内総生産(GDP)の過半を占める個人消費を冷やしかねない。政府は物価への目配りと同時に、10月以降の価格抑制策の有無も秋の臨時国会で慎重に議論してもらいたい。
15日の東京外国為替市場は1ドル=145円台半ばの円安基調で推移した。日銀が長期金利の上限引き上げを決めた7月28日は同138円台まで円高が進んだが、わずか2週間ほどで約7円も円安が進んだ形だ。米国の金融引き締めが長期化するとの観測から、日米金利差の拡大が市場で意識されている。政府・日銀には為替安定化に向けた適切な対応が求められる。
米国産標準油種(WTI)が1バレル=80ドル超で推移している。ロシアのウクライナ侵攻で2022年6月に同115円(月平均)に上昇し、1年後の23年6月に同70ドルまで下落していたが再び高騰している。石油輸出国機構(OPEC)プラスの協調減産が23年末から24年末に延長されたほか、底堅い米欧経済も背景にある。日本政府は国際エネルギー機関(IEA)や消費国とともに、産油国に価格安定化を働きかけてもらいたい。
総務省によると、日本の6月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比3・3%上昇した。政府の電気・ガス料金抑制策と、旅行代金などを割り引く「全国旅行支援」がなければ、1・1%上乗せされて4・4%も上昇していた。ガソリン高騰への補助金を含む政府の激変緩和措置は9月末で終了するほか、全国旅行支援も自治体により異なるが最長11月末に期限を迎えることに留意したい。
内閣府が15日に発表した4―6月期の実質GDPで、個人消費は前期比0・5%減と3四半期ぶりの減少だった。政府は財政規律に配慮しつつ、物価対策を視野に入れたい。ただ富裕層も一律に価格を抑制する現行の激変緩和措置のあり方も含め、慎重な対応が求められる。
(2023/8/16 05:00)