社説/米国の対中投資規制 規制は最小限に、対話の継続を

(2023/8/17 05:00)

バイデン米政権が、中国に対する新たな規制を打ち出した。半導体、量子技術、人工知能(AI)の3分野について、米国人による中国企業への投資を規制する。これまでの「モノ」の輸出に加えて「カネ」の動きも規制することで、3分野の技術進歩を遅らせる狙いだ。一方でバイデン政権は中国との対話を継続している。今回の規制が中国の新たな報復を招き、米国側の外交努力が損なわれないか懸念される。規制対象は安全保障分野の最小限にとどめたい。

バイデン政権は2022年に先端半導体・製造装置などの中国への輸出を事実上禁止したのに続き、対中投資も規制する。安全保障上のリスクが高い3分野を対象に、中国企業の買収や未公開株への投資といった資金の流れを規制する。米国の資金が中国の軍事力強化につながるのを防ぐ。中国は猛反発する。

中国政府は22年の対中輸出規制への報復として、8月から半導体素材などに使われる希少金属のガリウムなどの輸出を許可制とした。ただ中国は数量制限などを設けていない。経済停滞の中国は、不利益となる貿易上の報復合戦は回避したいのが本音だろう。米国も過度に中国を刺激することは慎みたい。

米国の対中投資規制が発効するには数カ月かかるとされる。規制案は米国企業・投資家の意見公募を経てまとめる。米半導体産業は中国への行き過ぎた投資規制は控えるよう政権に要望している。中国は世界最大の半導体市場であり、サプライチェーン(供給網)を混乱させると訴える。24年に大統領選挙を控えるバイデン大統領が産業界の声に耳を傾け、保護主義をさらに強めないと期待したい。

バイデン政権は中国への歩み寄りもみせている。6月のブリンケン国務長官に続いて訪中したイエレン財務長官は、対中投資規制を狭い範囲に限定すると中国政府に伝えた。7月にはケリー大統領特使が訪中し、気候変動問題の協議を継続することで一致した。米国は安保を除く幅広い分野で中国と対話を継続し、協力関係を築くことで不測の事態を回避する必要がある。

(2023/8/17 05:00)

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