産業春秋/きょう日中国交正常化51年、泉下で何を思う

(2023/9/29 05:00)

中国の産業発展に尽力した陳錦華氏は、2007年に刊行された回想録「国事憶述」の日本語版にこんな一文を寄せている。「我々は両国の先輩たちが打ち固めた基礎を大切にし(中略)友好に有益な任務を果たさなければならない」。

宝山製鉄所プロジェクトをはじめ大規模プラントの導入に携わり、中国企業連合会会長も務めた陳氏。日本の経済界にも知己が多く、とりわけ邦訳の出版を強く望んだのは当時、新日本製鉄(現日本製鉄)会長だった千速晃氏だったという。

日中共同声明の署名は1972年9月29日。半世紀を過ぎ、両国関係はかつてないほど冷え切っている。22年に開催された国交正常化50周年の記念レセプションも盛り上がりに欠け、東京電力福島第一原子力発電所の処理水問題では中国による日本攻撃が激化している。

自国経済への国民の不満をそらす意図もあろうが、関係改善の糸口は見いだせず、むしろ中国の姿勢硬化が懸念される。25日の国際原子力機関(IAEA)総会でも日中は非難の応酬を繰り広げた。

時代に翻弄(ほんろう)される国際関係をノスタルジーで捉えるのは適切ではない。ただ、日中関係の健全な発展を願った人たちは泉下で何を思うだろう。

(2023/9/29 05:00)

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