(2023/10/2 12:00)
石川ガスケット(東京都港区、石川伸一郎社長)は、ガスケットを製造する清原工場(宇都宮市)で、塗装工程の搬送に協働ロボットを導入した。ラインに人が立ち入る場合も流れを止めずに効率化を図っている。このほか、清原工場や宇都宮工場(同)では人手不足を補うため、搬送用途でロボット活用を拡大している。
石川ガスケットはエンジン部品のガスケットを主力製品とし、乗用車、商用車向けのほか産業、建設機械などさまざまなエンジンの要求仕様に適したガスケットを提供する。ガスケットは従来ゴムなどの軟らかい材料が主流だったが、同社は材料を金属に置き換えた「スチールラミネートガスケット」を1970年に日本で初めて開発した。
製品スペックや用途に応じた塗料材料の開発もノウハウの一つ。コーティングにより基本的な摩擦摩耗のほか高機能を付加することができる。エンジンの過酷な環境下での耐久性も要求されるため「塗料そのものや塗り方には非常に厳しい水準が求められる」(石川社長)。
塗装工程では、塗装機でガスケットをコーティングした後、加硫炉に搬送するが、ここに協働ロボットを導入した。同工程では塗料の乾燥により目詰まりを起こし、不良品が発生することがある。そのため定期的に人が塗装の様子や塗料の状態を監視する必要があるという。
普通の産業ロボットでは確認のたびに柵を開けてロボットを停止しなくてはならず、かなりの手間となる。石川社長は「毎回止める必要がなく稼働したまま監視ができる協働ロボットが適していると聞いた」と導入の経緯を説明する。
2022年に導入し、検証期間を経て現在は3台が最新の量産ラインで稼働している。順次ほかの塗装ラインにも拡大する計画。
協働ロボットは人と同じスペースでロボットが作業する場面での導入が主流だが、人が定期的に介入せざるを得ない工程でスムーズな自動化を実現するため、最適な選択肢となった。
一方で塗料の状態が適正かどうかを確認する作業は自動化することが難しいという。気温などにも左右されるため数値化できず、現状は熟練の作業員が目視で判断している。清原工場の最新のラインでは、プレス工程もほぼ無人となっており、全体にわたって自動化が進んでいる。
同社は塗装工程のほか、清原工場、宇都宮工場の両工場でプレス工程での搬送用ロボットを活用している。金型への加工対象物(ワーク)の供給、排出を担う。自動化の決め手としては採用難による人手不足が大きいが、そのほか原価低減や生産能力増強を狙う。
また自動車業界ではここ数年で新型コロナウイルス感染拡大や半導体不足による生産調整などが発生。部品メーカーも予測できない生産変動があった。自動化により作業員の配置を削減していた結果「生産変動の被害を最小限に抑えられたのでは」(同)と振り返る。
(2023/10/2 12:00)
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