(2023/10/9 05:00)
労働組合の中央組織「連合」は、芳野友子会長の2期目の再任を決めた。30年ぶりの高い賃上げ率を実現した2023年春闘の流れを、24年春闘でも継続してもらいたい。経団連の十倉雅和会長も24年春闘で賃上げ率4%超の実現に意欲を示す。日銀の植田和男総裁は24年春闘次第で、マイナス金利政策解除などを検討するとみられる。意欲的な賃上げでデフレ脱却に道筋を付け、日本経済は新たな成長に向けた局面変化を迎えたい。
連合が5日に開いた定期大会に岸田文雄首相も出席し、継続的な賃上げの重要性を訴えた。自民党政権下の首相の出席は16年ぶり。月内には物価高対策をはじめ賃上げや投資を促す経済対策を打ち出す。賃上げ機運を一段と醸成し24年春闘を後押しする。連合の芳野会長も「賃上げは国を挙げた重要課題」と応じ、「政労使」の意見交換を重視するなど政権と距離が近い。
岸田首相は連合と利害が一致する手厚い経済対策を講じる一方、国民民主党の元参議院議員を首相補佐官(賃金・雇用担当)に起用している。連合が支援する立憲民主党と国民民主党の両党間の溝は深い。首相は衆院解散・総選挙を見据えてか、連合との距離を縮めつつ野党の分断を進めたい思惑も透ける。
連合は存在感を高めることが課題になる。岸田首相は早々に30年代半ばに最低賃金1500円(時給)の目標を掲げ、賃上げを主導する。政権が掲げる成長戦略も、生産性を向上させるデジタル変革(DX)や部品点数が少ない電気自動車(EV)化が雇用にどのような影響を及ぼすのか気がかりだ。連合はこうした問題について政労使協議で建設的な議論を主導したい。賃上げでは経団連と共闘し、高水準を継続してもらいたい。
日銀によると4―6月期の需給ギャップはマイナス0・07%とプラス圏に接近した。24年春闘次第ではマイナス金利政策の解除やイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の撤廃に向かう可能性が市場で指摘される。日銀による国債購入の減少は政府の財政規律を高める効果も望める。24年春闘に期待したい。
(2023/10/9 05:00)
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