(2023/10/11 05:00)
物流の2024年問題が半年後に迫る。政府は24年度にトラック輸送能力が14%低下する事態に備え、月内に策定する経済対策に物流の緊急対策を盛り込む。課題は、荷主と物流業者の非効率な商慣習と、多重下請け構造における中小運送業の低収益性だ。物流業界が抱える根本的な課題を早期に解消したい。
24年度から自動車運転業務の時間外労働時間に年間960時間の上限が設けられ、収入減がドライバー不足に拍車をかけかねない。物流業界の労働時間は産業平均より2割長く、賃金は1―2割低い。ドライバーの労働時間を短縮する一方、処遇改善は待ったなしの状況にある。
経済対策は二つのアプローチを試みる点が評価できる。一つは、トラック運送業をめぐる非効率・理不尽な商慣習の見直しだ。トラック運転手の長時間労働は長い荷待ち時間の影響が大きい。荷主は対価なしにドライバーに荷下ろし作業への無償協力も求める。多重下請け構造の運送業は、荷主から大手物流業者、さらに中小運送業が仕事を受託する。末端ほど収益性が低く、人材も集まらない。
経済対策では、大手の荷主・物流業者にトラック運転手の荷待ち時間・荷下ろし作業を減らす計画を策定させ、計画を管理する責任者選任を義務付ける。国土交通省が定める「標準的な運賃」も引き上げ、中小運送業の処遇を改善する。荷主・大手物流業の協力に期待したい。
経済対策のもう一つのアプローチは、トラックの代替として船・鉄道の利用を今後10年で倍増させるモーダルシフトや、玄関先に荷物を置いて再配達を減らす「置き配」を促す施策を講じる。24年問題を、物流手段の多様化や新たな物流手段を開拓する好機と捉えたい。JR東日本は8月末、上越新幹線を荷物専用車両とする実証実験を行った。政府は24年度にも、新東名高速道路の一部区間を深夜帯に自動運転トラック用レーンとする。ドローン利用も含め、次世代技術の実用化が待たれる。
二つのアプローチで24年問題を軟着陸させ、トラック輸送を魅力ある事業に再生したい。
(2023/10/11 05:00)
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