(2023/11/21 05:00)
四半期報告書の廃止を盛り込んだ「金融商品取引法改正案」が20日の衆院本会議で可決・成立した。2024年度から国に提出する四半期報告書が廃止され、取引所規定に基づく四半期決算短信に開示が一本化される。短期的な利益ばかりでなく、中長期の視点で企業価値を高める契機になると評価したい。事務負担が軽減されることも企業に歓迎されよう。中長期的な成長投資が促されることで、持続的な賃上げと潜在成長率引き上げが実現すると期待したい。
同改正案は第211通常国会で継続審議とされ、今臨時国会で可決・成立した。第1、第3四半期の四半期報告書を廃止し、半期報告書と有価証券報告書の開示で済むようにした。年4回の開示が2回になる。
四半期報告書は06年の証券取引法改正により創設された。それまでは有価証券報告書と半期報告書の年2回の開示を原則としたが、投資家が企業情報に触れる機会を増やす目的で開示頻度を高めた。ただ開示企業は事務負担の増加に加え、短期的な株価や株主利益に目を配りがちになる弊害も指摘されていた。決算短信との重複もあり、今回の法改正でこれらの問題が解消に向かうことが期待される。
四半期報告書の廃止で懸念される開示情報の減少は、四半期の「決算短信」で補われる。東京証券取引所は24年度から、四半期決算短信に事業別(セグメント)収益や現金収支(キャッシュフロー)の開示を求めるなど、投資家にも配慮する。
岸田文雄政権は「新しい資本主義」の中で四半期開示の見直しを決めた。人的投資やデジタル変革(DX)に象徴される中長期の成長投資を促すことで、構造的な賃上げを起点とする経済好循環を回すのが目的だ。企業は目先の株価や株主還元にとどまらず、従業員や取引先といった多様なステークホルダー(利害関係者)にも目配りするコーポレートガバナンス(企業統治)が求められる。
今後は四半期決算短信の開示を「任意化」することが課題になる。企業は適時開示情報を充実させ、実現を目指したい。
(2023/11/21 05:00)
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