人と生きる ロボット新時代/経済産業相・西村康稔氏 データ活用で価値創出

(2023/11/28 05:00)

日本経済の成長には人手不足や生産性向上といった課題の解消が欠かせず、ロボット技術が大きな役割を果たす。29日にはロボット見本市「2023国際ロボット展」が開幕する。西村康稔経済産業相にロボット産業に対する期待や、競争力強化策などを聞いた。

―日本の産業用ロボットは世界で高いシェアを誇ります。

「日本にはロボットに親和性のある文化がある。地元の神戸にモニュメントがある鉄人28号やドラえもん、鉄腕アトムなど、ロボットに慣れ親しむ国民性もあり、ロボット産業を育んできたと考える。その結果、世界中の製造現場に日本のロボットが入っており、非常に競争力ある分野だ。完成品だけでなく、部品からソフトまで全体的に強い点が特徴だ。ロボット関連各社は最先端分野にも意欲的で、大変心強い」

―近年は中国勢が地位を高めています。

「技術面で追い上げはあるが、まだまだ日本が先端を走っている。こうした中、経済安全保障推進法に基づき産業用ロボットを特定重要物資に指定した。サプライチェーン(供給網)の構築を通して国内に技術基盤をしっかりと維持、発展させたい」

―ロボット産業のさらなる競争力強化に向けた施策は。

「日本の強みは、世界中のロボットから得られるデータだ。言語だけでなく画像や動画も含めた複数種類のデータを一度に処理できる生成人工知能(AI)モデルの開発を、産業技術総合研究所が進めている。ロボットの配置や生産計画、不具合の早期発見といったことも生成AIでできるよう支援し、製造業に加え物流や小売りなど幅広くロボット導入を促す。価格競争ではなく、日本のロボットでなければできない付加価値をデータ活用により創出する」

―中小企業の省力化投資支援を重点施策に掲げています。

「物流の『2024年問題』も含め、各地で直面する人手不足への対応のためにも進めねばならない。23年度補正予算案では、省力化に寄与するロボットなどの導入補助に総額5000億円規模で取り組む。中小企業がハードからソフトまで自社に適した自動化・省力化メニューを容易に選び導入できる、カタログのような仕組みを取り入れたい」

―人材育成支援は。

「産業界と教育界が参画する人材育成コンソーシアムを通じ、高専や工業高校に実践的な学びの機会を提供し育成してきた。一方、女性の理工系学部進学率が経済協力開発機構(OECD)加盟国で最下位という課題もある。女性や博士人材など産業を担う理工系人材を拡大させたい。企業も理系人材の採用を積極化してほしい」

―発展には新興企業の力も欠かせません。

「このほど米シリコンバレーに日本のスタートアップ支援拠点を開設したほか、日本貿易振興機構(ジェトロ)と現地のスタートアップ支援機関が覚書を結んだ。切磋琢磨しながら技術を磨き成長する取り組みを応援したい。大いにチャレンジしてほしい」(編集委員・政年佐貴惠)

*機械・ロボット・航空機面に連載企画

(2023/11/28 05:00)

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