現代の名工(4)電気・機械系の研修講師・小渕功氏、七宝職人・畠山弘氏

(2023/12/15 12:00)

電気・機械系の研修講師

能動的な学びのススメ

コベルコビジネスパートナーズ・小渕功氏

コベルコビジネスパートナーズ(神戸市中央区)の技術研修センター(兵庫県加古川市)で電気や機械系の研修講師を務めるのが小渕功さんだ。同社の講師陣はさまざまな経験を積んだベテラン揃い。前職で同社の業務改善コンサルを受けた時に「技術を長く生かせ、加えて社会貢献にもなる仕事」と思ったことなどがきっかけとなり、2013年に入社した。

20代後半で精密測定器メーカーに入社した。納入した測定器のメンテナンスを担当していたが、精密測定を自動化するための周辺システム開発をメーンで任されることになった。顧客ニーズはさまざまで、機械工学など幅広い技術分野の知識を身につけた。

その後入社した神戸製鋼所のグループ会社では、耐火物製造設備の保全を担当した。電気や機械などの技術分野で分けるのではなく「製造装置を一つの機能体として捉える」ことで、迅速な措置を可能にしていたという。

現在講義するのは若手が多い。そのため「難しいことを日常に落とし込んで伝える」ことを意識する。

例えばサーボモーター。自身と受講者の指をくっつけたまま、追従してもらう。指の場所や動かす速度を、緩急を付けてランダムに変える。これによりサーボモーターで位置や速度、力を制御していることを体感してもらう。「『なるほど』と腹落ちした様子が見られたときが面白い」。

ただ「人から教えられたことは過去のモノ。技術者はこれから先のことを考えるのが仕事」と説く。そのためには「目の前のことに疑問や興味を持ち、能動的に学んでほしい」とエールを送る。

七宝職人

経験で磨かれる美しさ

畠山七宝製作所・畠山弘氏

色鮮やかに盛り付けられた釉薬が美しい「七宝焼」は、日本が誇る伝統工芸品の一つ。七宝は全国各地で発展しているが、畠山七宝製作所(東京都荒川区)の畠山弘代表は「東京七宝」の職人だ。車のエンブレムやアクセサリー、社章などを手がける中で技術を磨き上げてきた。

同製作所の創業者で同じく七宝職人だった父の手伝いを小学生の頃から開始。大人になるにつれ、自然と「会社を継ごう」と思い大学卒業後、本格的に修行した。東京七宝は“胎”と言う金属のベースにガラス質の釉薬の盛り付け・焼き付け・酸洗いなど多くの工程を経て製作する焼き物。最難関は焼き上がり後の「研磨」だ。

0・05ミリメートルだけを機械で削る技術を習得するために数をこなし、絶妙な感覚を身につけた。仕上げにメッキ加工するのも東京七宝の特徴で、独特の艶めきや耐久性が出る。さらに畠山代表は「透胎七宝」を量産できる唯一の職人。胎に空けた空間に表面張力を駆使して釉薬を盛り込む高度な技術で、今は透胎七宝で傘のデザインを施す指輪を制作中だ。

父から製作所を継ぎ、大手船舶会社のお土産品を手がけたことをきっかけに受注生産から、アクセサリーなど自社製品の製作・販売も本格化。今後は娘が同製作所を継ぐ予定だ。ただ東京七宝全体で見ると職人はとても少ない。畠山代表は「東京七宝を学びたい人には門戸を広げて待っている。粘り強く取り組み、東京七宝の美しさを後世にも伝えて欲しい」と後継者に希望を託す。

(2023/12/15 12:00)

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