(2024/1/9 05:00)
岸田文雄政権が正念場を迎えている。政治への信頼回復とデフレ脱却に加え、能登半島地震への対応といった先送りできない試練が続く。難航する安否確認や生活支援の現状は政権の危機管理能力が問われかねない。政治資金問題をめぐっては安倍派議員が逮捕され、政治改革への難路が想定される。賃上げの成果で支持率が浮揚するかは予断を許さない。まずは目の前の震災対応に「一意専心」(岸田首相)で取り組んでほしい。
元日に発生した能登半島地震の被災地は、現在も安否を確認できない住民が多数おり、断水や停電、道路の寸断などが被災者を苦しめる。岸田政権は、被災者の要請を待たずに行うプッシュ型支援をさらに加速してもらいたい。9日にも2023年度予算から47億円の予備費拠出を閣議決定する予定だ。飲食や燃料の支給など、差し迫った課題への対応を急いでほしい。
政府は能登半島地震を激甚災害に指定し、災害復旧に向けた国の費用負担を増やす方針だ。被災者の生活を支える支援パッケージもまとめる。岸田首相は24年度予算の予備費増額も財務相に指示した。捜査救助活動を第一に、長期化が想定される復旧への歩みを確実に進めたい。
被災地で厳しい生活が続く中、自民党の現職の安倍派議員が7日、政治資金規正法違反の疑いで逮捕された。組織ぐるみの可能性がある同党の「裏金」疑惑の全容を解明し、政治改革を進めなければ、政権の行方さえ危うい局面を迎えた。党内に新設する政治刷新本部(仮称)に有識者も参加し、再発防止と派閥のあり方を議論する。月内にまとめる中間案は実効性を担保できる内容なのか注視したい。
4月には衆院の細田博之前議長の死去に伴う補欠選挙が行われる。東京地検特捜部の捜査次第では議員辞職による選挙区の増加も想定され、自民党の派閥政治が厳しく問われる。秋の自民党総裁選も混沌としてくる。デフレ脱却で支持率回復を狙う岸田政権だが、震災で始まった24年は政権にとって試練の年となる。震災対応も政治改革も着実に歩みを進めてほしい。
(2024/1/9 05:00)