社説/能登地震のデマ拡散 情報源の多様化と発信元確認を

(2024/1/10 05:00)

能登半島地震の発生直後から、デマ・偽情報が会員制交流サイト(SNS)などを通じて拡散した。被災者を装って救助を求めた悪質な投稿や、東日本大震災の映像を能登半島地震の被災地と装った動画などもあった。救助活動の妨げとなり、被災者にも正確な情報が届かなくなる。悪質な投稿はもとより、事実と思い込んで拡散した第三者の行動も厳に慎みたい。

岸田文雄首相は総務省を通じてプラットフォーム事業者4社に対し、不適切な投稿の削除を念頭に適正な対応を要請した。デマ・偽情報を沈静化させ、難航する捜査救助活動と避難者支援、復旧への歩みを進めたい。

能登半島地震は、輪島市の「朝市通り」周辺の火災が200棟以上に及び、珠洲市では古い木造家屋が数多く倒壊し壊滅的状況にある。確認された死者数が日々増加する中、被災者を逆なでする心ないデマ・偽情報は断じて許すことはできない。

SNS上では閲覧数獲得が目的の投稿も少なくない。実在しない住所や無関係の画像で救助を求めたり、外国人窃盗団出現のデマも流れた。イーロン・マスク氏が2022年に旧ツイッター(現エックス)を買収し、閲覧数に応じて広告収益を分配し始めたことが投稿増加の一因とされる。被災地情報は公共機関などから入手し、偽情報に惑わされないよう努めたい。

23年版「防災白書」では、デジタル化の進展で被災状況の迅速な把握が可能になった一方、SNSなどを通じたデマの拡散に警鐘を鳴らしていた。関東大震災では火災で生じた爆発・飛び火・井戸水の濁りが、朝鮮人による爆弾投てき・放火・投毒だとするデマが広がり、朝鮮人を殺傷する事件が各地で多発。東日本大震災でも中国人窃盗団による略奪などのデマが拡散した。今後は人工知能(AI)で生成したフェイク動画など、新たなリスクにも留意したい。

総務省によると、偽情報を見分ける「自信がない」人は全体の4割を占める。同省は、複数の情報と読み比べたり、情報の発信元を確認するよう注意喚起している。実践してほしい。

(2024/1/10 05:00)

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