社説/台湾総統選挙 「親米」勝利も米大統領選に懸念

(2024/1/15 05:00)

台湾総統選が13日に投開票され、与党・民進党の頼清徳副総統が当選した。専制国家・中国と距離を置き、「一つの中国」を認めない民意を尊重・歓迎したい。だが中台関係の緊迫化は必至だ。西側諸国はウクライナと中東情勢、さらに中国との三つのリスクと向き合う。11月の米大統領選次第では、これらリスクが拡大し、世界の分断が進みかねないと警戒したい。

台湾総統選は、親米で民進党の頼氏が、親中派の国民党候補らを退け勝利した。台湾統一へ武力行使も辞さない中国は、頼氏を独立志向の強いトラブルメーカーと警戒し、台湾海峡をめぐる緊張が高まりかねない。米中は2023年11月の首脳会談で軍事対話の再開で合意した。米国は中国との国防相対話を求めており、緊張緩和に向け中国への働きかけを強めてほしい。

台湾総統選と同時に行われた立法院(国会に相当)選挙で民進党は過半数を維持できず“ねじれ”状態になる。23年は14年ぶりの低い経済成長が見込まれ野党に票が流れた。頼氏の政策遂行力が試される。米国は台湾の独立を支持しておらず、頼氏は最大の輸出先・中国と経済関係を維持し、東アジアの安保につなげる役割を担いたい。

台湾有事をけん制する上でもウクライナ情勢で西側諸国は改めて結束を強化したい。米国は共和党の反対でウクライナへの追加支援を可決できず、欧州連合(EU)もハンガリーの反対で支援が決まらない。ウクライナ支援疲れが広がることが懸念される。武力による現状変更を国際社会は断じて許さないことを中国に示す必要がある。

仮にトランプ氏が米大統領に再選されたら、共和党が縮小を求めるウクライナ支援が細る。トランプ氏は大統領在任中にエルサレムをイスラエルの首都と承認した経緯があり、中東情勢も一段と悪化しかねない。24年は韓国やインド、EUなど70カ国・地域以上で選挙が行われる。欧州議会選挙では右派が台頭し、内向きの動きが進む可能性がある。西側諸国はグローバルサウスとの連携も強めつつ国際秩序の再構築を模索したい。

(2024/1/15 05:00)

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