社説/米欧のインフレ再燃懸念 日銀の「正常化」への影響を注視

(2024/1/30 05:00)

米欧がインフレの再燃を警戒している。欧州中央銀行(ECB)が25日に政策金利据え置きを決めたのに続き、米連邦準備制度理事会(FRB)も30―31日の会合で据え置く見通しだ。資源高は一服しているが、米欧は賃上げと消費拡大で物価上昇が再加速しかねず、米国も高水準の政策金利を維持するとみられる。米欧はいつ利下げに転じるのか、日銀の政策転換に影響を及ぼしかねず注視したい。

ECBは主要政策金利を3会合連続で4・5%に据え置くことを決めた。2023年12月のユーロ圏の消費者物価指数が前年同月比2・9%上昇(前月は2・4%上昇)し、8カ月ぶりに加速した。賃上げが反映されやすいサービス価格は同4・0%上昇しており、ECBは賃上げによるインフレ圧力を警戒して金融引き締めを維持した。

ただ高水準の金利は景気を冷やす。市場では景気配慮の利下げが「今春」に行われると予測する。ECBのラガルド総裁は「今夏」の利下げの可能性を指摘し、早期の利下げ観測をけん制する。物価抑制と域内景気をいかに両立させるか、ECBには慎重な政策運営を求めたい。

米FRBも30―31日の会合で4会合連続で政策金利の誘導目標を5・25―5・50%に据え置く見通しだ。米国の23年10―12月期の実質成長率(年率換算)はプラス3・3%と、高金利下でも堅調な成長が続いたためだ。

米国の23年12月の平均時給は前年同月比4・0%増、消費者物価指数も同3・4%上昇と市場予測を上回る。ただ経済成長と賃金上昇はインフレを再加速させかねず、市場では3月と予測されていた利下げ時期を5月に修正する向きが多い。インフレを抑えつつ、いかに利下げに政策転換するのか、ECBと同様のジレンマを乗り越えて“軟着陸”を実現してもらいたい。

日銀は24年春季労使交渉(春闘)などのデータを見極め、4月にマイナス金利政策を解除するとの見方が有力だ。日米による同時期の政策転換は急激な円高を伴いやすく、米国の利下げ時期にも目配りしつつ金融政策の正常化を模索してほしい。

(2024/1/30 05:00)

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