三菱電機・名古屋製作所、「現場発」の労働環境改善 妊婦・子育て女性に寄り添う

(2024/1/31 12:00)

三菱電機の名古屋製作所(名古屋市東区)では、多様な社員が働きやすい環境を整えている。男性が多い製造現場の中で2022年9月に女性2人が立ち上がり、労働環境の改善に取り組み始めた。皆が笑顔になれるように「スマイリー活動」と名付け、特に妊娠中や子育て中の女性に寄り添ってきた。直近では男性を含め6人が活動に参加。参加者だけでなく、周囲の妊婦らに対する理解を深めるために23年10月から疑似体験の機会も設ける。

  • 妊婦体験では腹部に水袋を入れて階段の昇降などを行う

「14年前、自分自身が妊婦だったときに悩んでいた状況が、変わっていないことに気が付いた」。サーボモータ製造部センサ工作課の佐藤佳恵氏は活動開始前を振り返る。そこで、佐藤氏と品質保証課の田村香織氏が2人で活動を始めた。

上長と連携しながら労働環境の改善を進めた。具体的には妊婦の靴の履き替えを補助する道具「靴取り名人」を製作。クリーンルームと休憩エリア間の移動などで靴の履き替えが1日に15回以上あるといい、かがむ体勢を取りにくい妊婦の負担になっていた。

  • 靴の履き替えを補助する道具「靴取り名人」。名古屋製作所内に約20本設置した

靴取り名人は玄関のげた箱の脇に設置。道具の使い方も掲示して利用を促す。実際に「妊婦だけでなく、足を痛めていた男性にも使ってもらえた」(田村氏)と手応えを語る。

ほかにも作業台を高くしたり、座ったまま仕事をしたりできる工夫を施し、妊婦への負担を軽減してきた。スマイリー活動は週1回会議を行い、課題解決に向けて話し合っている。

さらに、妊婦の気持ちを理解してもらうため、主に管理職などの男性社員を対象に妊婦体験を実施。腹部に水が入った袋を入れて廊下を歩くほか、モノを運搬したり階段を昇降したりする。基本的には5日間かけて体験を実施する。所長や副所長を含む累計17人が体験した。妊婦のほか高齢者体験も行う。

サーボモータ製造部の大塚久部長はスマイリー活動について「上からではなく、現場発の事例だ。目に見えて良い効果が出てきている」とし「働きやすい環境が広がるとうれしい」と話す。センサ工作課の谷山亮一課長は「女性特有の問題は見えにくいこともある。支援を続けていきたい」とした。周囲の協力を得ながら、快適な労働環境の実現を図る。

(2024/1/31 12:00)

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