(2024/2/2 05:00)
中小企業が新卒採用(2024年4月入社)で苦戦している。日本商工会議所によると、計画した採用数に満たなかった企業は7割を超え、採用できなかった企業は3割に達した。5割の企業が初任給を引き上げたが、採用が進まない厳しい実態が浮かび上がった。中小企業が人材確保を狙った「防衛的賃上げ」の効果を疑問視し、厳しい経営環境から賃上げ率を抑える動きが広がらないか懸念される。
日商の調査によると、新卒採用を「実施した」企業は全体の35・8%。実施企業のうち「採用できたが計画した人数に満たなかった」(43・2%)と「募集したが採用できなかった」(30・8%)を合わせると74・0%に達した。企業の50・2%が初任給を引き上げていた。
24年春季労使交渉(春闘)は中小企業の賃上げ率が前年を上回るかが焦点になる。新卒採用のほか既卒採用を増やすため、人材難が深刻なサービス業を中心に防衛的賃上げが相次ぐと想定される。ただ東京商工リサーチの23年12月調査では、24年の賃上げ率が前年を超えそうな中小企業は1割にとどまった。製造業や建設業の間では、資源高や人件費高騰を受けて採用を手控える動きもある。防衛的賃上げにもおのずと限界があり、中小企業の動向は予断を許さない。
連合によると、23年春闘では300人未満の中小組合の賃上げ率は3・23%。比較可能な13年以降で最高の伸び率だった。ただ日商の調査では1月の全産業の業況DI(指数)は物価高と人手不足を背景にマイナス11・4と悪化している。24年に2年連続で高水準の賃上げを実現できるかは不透明感を拭えない。
政労使は、中小企業の賃上げ分を取引価格に上乗せする価格転嫁の推進を訴える。ただ、これだけで持続的な賃上げを実現するのは難しい。24年に倒産の大幅増が予想される中、金融庁は今春に金融機関向け監督指針を改正し、中小支援の軸足を資金繰りから事業再生に移す。中小企業は、生産性向上や新たな価値の創出により賃上げ原資を確保し、新卒採用でも学生から選ばれる企業に変革したい。
(2024/2/2 05:00)
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