(2024/2/22 05:00)
半導体受託製造(ファウンドリー)最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に建設した第1工場が24日、開所式を開く。年内に量産が始まり、第2工場も年内に着工される。経済安全保障の確保はもとより、半導体の安定確保は日本製造業の国際競争力を引き上げる。九州への多大な経済波及効果も見込まれ、地域経済を活性化させる好事例をさらに増やしたい。
第1、2工場の総投資額は3兆円規模に達する。日本政府は第1工場の投資の半額程度を助成し、第2工場も巨額支援が見込まれる国家プロジェクトだ。2工場で3400人の雇用を創出し、半導体関連業種の一段の集積も見込まれる。トヨタ自動車によるTSMC製造子会社への出資も、自動車の電動化や知能化に必要な先端半導体の安定調達に資すると期待される。
九州経済調査協会は九州への経済波及効果が10年間で20兆円超と試算する。日本はTSMCの誘致を足がかりに、長く停滞した半導体産業の復権を目指しつつ地方再生にも期待したい。
TSMCの熊本進出は、米中対立の地政学リスクと表裏一体の関係にある。台湾の次期総統に親米の頼清徳氏が5月に就任し、台湾海峡の緊張の高まりが懸念されるだけに、日台は半導体サプライチェーン(供給網)の再構築を着々と進めたい。
日本政府は半導体関連の国内売上高を2030年に20年比3倍の15兆円に拡大する目標を掲げる。すでに政府は計4兆円規模を予算措置している。ラピダスが27年の量産を目指す最先端半導体への投資は2兆円規模とされ、その多くも政府が支援する方針だ。政府支援の費用対効果も検証する必要がある。
日本企業は世界シェア3割を持つ半導体製造装置などで存在感を示しつつ、半導体の国内生産を中長期で拡大し、経済安全保障を確保することが求められる。その上で自動運転や人工知能(AI)など、先端半導体を必要とする成長分野で日本は存在感を高めていきたい。新たな産業の創出などを通じて潜在成長率を引き上げ、「失われた30年」を早期に取り戻したい。
(2024/2/22 05:00)
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