(2024/2/28 12:00)
安全性に自信を持つ製品でも、誤使用による事故は後を絶たない。ベビー用品も例外ではなく、2022年ごろには抱っこ紐(ひも)による乳幼児のすり抜け事故が問題視された。乳幼児を抱っこ紐で固定していても、紐が緩む場合や前かがみなど無理な姿勢をした時に隙間が生じ、そこから子どもがすり抜ける事例が多く報告された。ベビーカーやチャイルドシートなど高品質なベビー用品を開発・販売するコンビ(東京都台東区)にとっても大きな課題だ。
同社は取扱説明書を図入りにするなど注意喚起を分かりやすく行い、誤使用を防ぐ取り組みを強化している。ただ、それだけで誤使用がなくなるわけではない。滝澤学品質保証部長は「誤使用だからで片付けてはいけない」と製品安全への考え方を語る。バックルが一つ外れても安全を確保できる製品づくりに取り組む姿勢が必要だという。信頼性設計の一種であるフェールセーフの手法を取り入れることで、製品の安全性を高める考え方だ。
それでも同社が販売するベビーカーをはじめとする乳幼児用製品は想定を超える使われ方があり、常に使用実態を把握する必要がある。その対応として製品モニターからのフィードバックのほか、不具合の申し出などを通し、どのような誤使用があるのかを認識する努力を怠らない。さらに考えられ得る誤使用を再現し安全性を確認する自社試験を実施している。
法令や安全基準に基づく試験では「より厳格化した自社基準を設定し、想定を超えた使用にも安全性を担保できるようにしている」(滝澤部長)と話す。
通常、使用で生じた修理を受け付けるのはメーカーとして一般的な対応だが、同社は顧客から依頼された不具合部分のみを確認・修理するだけではない。持ち込まれた製品全体の使用状況を確認し、修理箇所のほかに誤った使用が行われていないかまで細部にわたり目を配っている。「操作性、付属品の機能面、外観の違和感などがないか、12種15項目を追加で点検している」と滝澤部長は説明する。
誤使用が疑われる箇所を発見した場合は、正しい使用法を示したメモを製品に同封して顧客に知らせ、誤使用による事故防止に役立てている。「修理箇所以外の点検は以前から実施していたが、メモを付けるようになったのは21年4月から」(同)と安全性を重視する同社の取り組みの一端を語る。
さらに誤使用だけでなく、鉄道やバスなどでベビーカーなど使用環境における実用的な安全性の検証や、国内での安全基準策定への積極的な関与を行う。世界的には国際標準化機構(ISO)に関して国内代表として国際会議への出席など業界全体での安全性向上に貢献している。世界一の品質を標榜(ひょうぼう)する同社にとって、安全への取り組みは他社製品との差別化ではなく、業界とともに歩むべき、安心安全な製品を提供する社会的責任が基本だという。
(2024/2/28 12:00)
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