(2024/2/28 12:00)
若手の専攻が理系にシフト
今年も人事異動の季節がやってきた。春から新たにサプライチェーン・マネジメント(SCM)に関わる人も少なくないだろう。この10年ほどの間に日本国内にも「サプライチェーン(供給網)」と名の付く部署を持つ企業が増えた。SCMのプロフェッショナルたちはどのような人々なのか。米SCM協会(ASCM)のサーベイ「The Supply Chain Profession in 2023」を参照しつつ、その給料事情・バックグラウンドなどについて省察してみたい。
前回22年のリポートでは米国における給与の中央値が1年目で約6万ドル程度、10年目を過ぎて中堅層に差し掛かった辺りから10万ドルを超え始めることが報告された。今回1年目給与が5000ドルほど上昇した一方、10年目給与には大きな変化が見られなかった。上級職の給与については高いところで18万5000ドルから19万2000ドルへと上昇しており、SCMプロフェッショナルへの期待は依然として高い様子がうかがえる。
また、ジェンダー間の給与ギャップについても若手層の平均給与額において女性が男性を若干上回る状況が数年前より継続している。今回も僅差ながらその傾向が維持された。SCM先進国である米国ならではの状況ともいえるが、SCMの標準化が進めば各国においても同様の変容が見られることになるだろう。
教育面のバックグラウンドにも特徴がある。サーベイに参加した約4000人の約34%が修士号を持つという。特に米国では30歳以上の実務家に経営学修士(MBA)取得者が多い。定番の必修科目である「オペレーションズ・マネジメント」の適用領域としてSCMを学ぶ機会がある。他方、30歳未満の年齢層では自然科学系の研究科を修了した人材が多い。MBA出願者の平均実務経験年数が5年程度であることに鑑みれば、新卒採用は理系中心といえそうだ。
さて、皆さんの身近で「サプライチェーン」と名の付く部署に勤務する方々はこれらの特徴に合致しただろうか。次回24年版に向けたサーベイでは日本語の質問票が用意される。より多くの日本語を母国語とする実務家が参加することで従来の「SCMプロフェッショナル」像は変容するのか、注目したい。
◇著者:MTIプロジェクト 『基礎から学べる!世界標準のSCM教本(日刊工業新聞)』の著者である山本圭一・水谷禎志・行本顕の3氏によって創設された世界標準のSCM普及推進プロジェクト。MTIは「水山行」のラテン語の頭文字。本連載はメンバーのうちASCMのSCMインストラクター資格を持つ行本顕が執筆を担当
(2024/2/28 12:00)
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