(2024/2/29 05:00)
政府は、経済安全保障上の機密情報を扱う人材を認定する公的資格制度の創設を目指している。民間人も対象となる同制度の創設を盛り込んだ新法案が27日に閣議決定され、今通常国会での成立を目指す。政府が情報取扱者の適性を法的に担保することで、日本企業の情報保全が国際的に評価され、外国企業との共同研究開発や政府調達などが拡大する効果が期待される。
ただ資格認定を受けるには、政府が事前に身辺調査を行うなどプライバシーを侵害する恐れがあるほか、経済安保上の機密情報の範囲といった制度の詳細も明らかになっていない。与野党は国会で審議を尽くし、企業や従業員・研究者が不利益を被らない制度にまとめてほしい。
創設を目指す公的資格制度は「セキュリティー・クリアランス(適性評価)制度」。適性評価制度は2014年に施行された特定秘密保護法で導入されたものの、対象は防衛・外交・スパイ防止・テロ防止の4分野に限られ、資格認定を受けたのはほとんどが公務員だった。
だが人工知能(AI)に象徴される先端技術の進展により、安全保障の対象は経済分野にも拡大した。日本企業の技術が中国などに軍事転用される恐れもあり、企業の従業員や研究者も適性評価制度の適用が求められていた。先進7カ国(G7)では日本だけが未導入だったが、日本企業による情報保全の信頼度が高まれば、国際的な商機拡大につながると期待される。
ただ政府保有の機密情報にアクセスする資格だけに、政府による身辺調査を受ける必要がある。犯罪歴や薬物使用、精神疾患など7項目が調査され、機密を守れるかを確認される。適性評価は本人の同意が必要だが、社命で断りにくい状況も想定される。資格を得られなかった場合の個人情報管理も問われる。
他国に流出すると安保に支障をきたす「重要経済安保情報」の定義も明らかでない。対象の範囲を広げ過ぎると企業活動が制約され、狭過ぎると国際的に評価されない。今国会で審議を深め、企業に配慮した効果的な新制度に仕上げてほしい。
(2024/2/29 05:00)
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