「改革、現実直視し現場の声聞く」菱洋エレクトロ社長・中村守孝氏

(2024/3/1 12:00)

三枝匡著『V字回復の経営』は、すり切れるほど読んだ。ビジネススクールに通っていた頃、知識は得られたが、果たして仕事ができるようになるのかと疑問を持ち、違和感を抱いていた。人との出会いや読書を通じて、違和感が解消されていった。たどり着いたキーワードが「本質」だった。

目の前で起きていることには因果があり、真の病因がどこにあるのかを探すこと。つまり論理性がリーダーに求められていると気が付いた。論理は精神に先立つことを実践を通じて学ぶことができたと思う。

V字回復の経営には「強烈な反省論」という言葉がある。菱洋エレクトロに入社後、社員に反省を促したことがある。社長に就く前、13人の社員を選出し、ありとあらゆるネガティブなことを紙に書いてもらった。枚数は300枚に上った。組織の分断や複雑な構造が明らかになり、反転させていった。

田坂広志著の『知性を磨く「スーパージェネラリスト」の時代』からも根本的な課題を見つけ、本質に迫り、論理性を持って謎を解く姿勢を学んだ。本質に迫るためには現実を直視する必要がある。実際に、拠点を訪れて現地で働く社員と向き合った。当時選んだ13人にも拠点に行って、現地社員の声を直接聞くようにと促した。改革はうまくいったと感じている。

学び、実践し、そして挫折を繰り返してきた。ただ、常に全力ではつぶれてしまう可能性もあるだろう。楠木建著『絶対悲観主義』は、逆張りの考え方とも言える。うまくやらないといけないと思うと、視野が狭くなることも確かにある。過去に困難に直面し「もうダメだ」と開き直ったことがある。ただ同時に、あらゆる手をやり尽くそうという思いが強まった。結果、事態が好転した。

経営層に近いほど、現実を直視し、本質に迫る必要があるのではないか。そこで初めて課題への解決策が浮かぶとともに、精神的なスタミナや自信も得られると実感する。

(2024/3/1 12:00)

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