社説/あす中国「全人代」開幕 金融緩和依存の経済運営に懸念

(2024/3/4 05:00)

中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が5日開幕する。不動産不況の長期化と雇用不安に見舞われる中、2024年の経済成長目標をどの水準に設定するかが焦点だ。国際通貨基金(IMF)は、不動産開発企業の再編が遅れると24年の実質成長率が3%台に低下すると予測する。中国政府は金融緩和策に依存し、抜本的な経済活性化策を打ち出しておらず、一段の経済減速が懸念される。

中国の23年の実質成長率は5・2%と、政府目標「5%前後」を達成した。中国政府は「経済の回復を実現した」と内外に訴え、金融緩和以外の経済対策に踏み込んでいない。IMFは中国の実質成長率が24年に4・6%に低下すると予測。不動産事業への対応が遅れれば成長率は1・0ポイント下振れするとみている。経済より政治を優先する習近平政権による今後の経済運営には、大きな不安が残る。

中国共産党の重要会議である中央委員会第3回総会(3中総会)の開催時期も公表されていない。習政権が経済再生に踏み込んでいないことを意味する。中国政府は地方財政が疲弊する中、金融緩和策への依存を高めざるを得ない。2月5日に中国人民銀行が預金準備率を引き下げて1兆元(約21兆円)の資金を放出し、同20日には住宅ローンの指標金利を引き下げた。

住宅需要の喚起が狙いだが、不動産開発企業の早期処理や建設中物件の完成・引き渡しといった抜本策を講じておらず、不動産不況の長期化でデフレ経済に陥らないか懸念される。

中国は不動産関連事業の低迷により個人消費が停滞し、1月の消費者物価指数は4カ月連続で前年同月を下回った。23年12月の16―24歳の失業率は14・9%に達する。地方政府による23年の土地使用権の売却収入は前年比12%減と落ち込んだ。

台湾海峡情勢や東・南シナ海への海洋進出、改正反スパイ法施行などの政治的なリスクは外国企業の対中直接投資にも影響し、23年は前年比で8割も減った。習政権は外国企業の中国離れも深刻に受け止め、経済への目配りを怠ってはならない。

(2024/3/4 05:00)

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