社説/「中堅企業」元年 国内投資の拡大と賃上げに期待

(2024/3/15 05:00)

政府は2024年を「中堅企業元年」と位置付ける。給与や従業員数の伸び率で大企業を上回る中堅企業を支援し、中堅企業が多く立地する地方で持続的な賃上げや国内投資を促す狙いだ。中小企業へのM&A(合併・買収)によるグループ化なども後押しする意向で、産業の新陳代謝の進展も期待される。成長の伸びしろが大きい中堅企業の国内投資を促し、日本経済は持続的な成長を実現したい。

政府は産業競争力強化法などの改正案を今通常国会で成立させ、従業員2000人以下の企業を「中堅企業」と法的に位置付ける。約9000社が対象になる。中小企業が租税特別措置などで優遇されるのに対し、中堅企業は大企業と同等の扱いだった。曖昧だった中堅企業の位置付けを明確化し、中堅企業に的を絞った支援策を講じる。

大企業はこの10年、海外事業の拡大を進めた一方、中堅企業は海外と同時に国内投資にも目配りしてきた。地域雇用の貴重な受け皿でもある。中堅企業の支援強化により「国内」での投資が拡大し、持続的に賃金が引き上がる効果を引き出したい。

政府は13日、省庁横断で中堅企業の成長を促す190の支援策をパッケージにまとめた。工場の新設など大規模投資への補助や、意欲的な賃上げや中小企業へのM&Aを後押しする優遇税制の適用、販路拡大への支援策などの施策を講じる。24年度当初予算案と税制改正から措置し、中堅企業元年として重点支援する。産業界の低い生産性を引き上げる契機としたい。

中小企業の間では優遇措置を受けるため、企業規模をあえて抑える向きもある。中堅企業への支援が強化されることで、中小企業が中堅企業への規模拡大を目指す効果にも期待したい。

日本経済は歴史的な転換期を迎えつつある。賃金と物価がともに上昇し、金利のある世界に戻れば企業は収益構造の一段の強化を迫られる。懸念されるのが経営体力で劣る中小企業の行方だ。中堅企業は中小企業へのM&Aにより労働移動の受け皿となり、産業全体の賃金を底上げする役割も担ってほしい。

(2024/3/15 05:00)

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