(2024/4/4 05:00)
大手企業と中小企業の賃上げ幅で格差が広がっている。中小企業の労働分配率が大手企業より高いことだけが理由ではない。中小企業の賃上げ分を取引価格に上乗せする価格転嫁が十分に進んでいないことも背景にある。価格転嫁できた額が大きい中小企業ほど賃上げ幅が大きい実態も明らかになっている。デフレからの完全脱却に向け、親事業者には価格転嫁への全面的な理解・協力を求めたい。
自動車や電機などの産業別労働組合(産別)で構成する金属労協によると、2024年春季労使交渉(春闘)での平均賃上げ額(3月末時点)は月額9593円で、比較可能なデータでは過去最高を更新した。規模別では、300人未満の中小労組が月額8019円、1000人以上の大手労組が同1万2389円と、4370円の格差が付いた。23年春闘の同時期は1818円の格差だったが、さらに拡大した点に留意したい。
企業の付加価値に対する人件費の比率を示す労働分配率は、大手企業が4割、中小企業は7割程度。そもそも中小企業の賃上げ余力は大手より小さい。加えて価格転嫁の状況によって、中小企業の賃上げ幅が抑えられている実態が懸念される。
金属労協傘下で中小労組が多い「ものづくり産業労働組合(JAM)」によると、原材料・エネルギー価格の上昇分を価格転嫁できた企業の平均賃上げ額(3月末)は月額9966円、これらのコストに加えて労務費の上昇分も転嫁できた企業は同1万1568円に達した。価格転嫁の状況が中小の賃上げ幅を左右する実態が浮かび上がる。親事業者は自社の賃上げにとどまらず下請けにも目配りし、高水準の“歴史的な春闘”を実現したい。価格転嫁は今春闘を機に商習慣化する必要がある。
中小企業も収益基盤の強化に向けた自助努力を重ねたい。デジタル化による生産性の向上、新たな価値の創出、従業員の学び直し(リスキリング)によるスキル向上、さらに合従連衡によるグループ化も模索したい。価格交渉力を引き上げ、持続的な賃上げにつなげてほしい。
(2024/4/4 05:00)
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