社説/緊迫の中東情勢 拡大する戦火と原油高騰に懸念

(2024/4/8 05:00)

イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まって半年になる。戦闘は周辺国にも波及し、中東情勢は一段と緊迫の度合いを増している。中東のエネルギー供給不足が懸念されて原油価格も高騰し、世界経済に多大な影響を及ぼしかねない。中東での戦火の拡大を防ぐには、パレスチナ自治区ガザでの戦闘終結しかない。それを実現できる「国際社会」なるものが存在しているのかが問われている。

パレスチナ自治区ガザは、イスラエルの報復攻撃により3万3000人超が犠牲となり、110万人が飢餓状態にある。イスラエルは150万人の市民がいる最南部ラファへの侵攻を目指しており、民間人犠牲者の一段の増加や人道危機の拡大が懸念されている。バイデン米政権もラファ侵攻に懸念を表明しており、この侵攻を食い止められるかが当面の焦点になる。

イスラエルのネタニヤフ政権は、ガザへの物資搬入を拡大する対応をとるという。バイデン米大統領がイスラエルへの政策変更の可能性に踏み込んだためだ。ガザに食料支援をしていた米国の非政府組織(NGO)の職員がイスラエル軍の空爆で死亡しており、ネタニヤフ首相も対応せざるを得なくなった。だが人道危機は抜本的に解消されず、あくまでもハマス壊滅と人質解放を目指す意向である。

国連安全保障理事会は3月25日、ガザでの戦闘の即時停戦を採択したが、イスラエルの同盟国・米国は棄権している。米国をはじめとした「国際社会」は戦闘を終結させることができるのか、国際社会が本来の機能を取り戻すことが求められる。

中東情勢はイスラエルとハマスの戦闘にとどまらず周辺国にも波及している。レバノンやシリア、イエメンの親イラン勢力はイスラエルをけん制。対するイスラエルはシリアのイラン大使館施設を空爆し、イランは報復を示唆する。先週末の米国産標準油種(WTI)は一時1バレル=87ドル台後半まで上昇し、約5カ月ぶりの高値を付けた。エネルギーの供給不足による世界経済への影響は計り知れず、中東情勢の行方を強く警戒したい。

(2024/4/8 05:00)

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