社説/日本経済「2040年」(中)「勝ち筋」戦略分野と目標の設定を

(2024/5/3 05:00)

経団連は、2040年の長期を見据えた政府への提言をまとめた。「失われた30年」に終止符を打ち、日本産業が再び飛躍するには、官民が産業競争力の強化に向けた「長期戦略」を共有すべきだと提言した。政府は短中期の戦略・計画は策定しているものの、長期的な方向が不明確だとした。政府は省庁横断のロードマップを策定し、官民連携による長期の産業戦略を確立することが求められる。

経団連は「日本産業の再飛躍へ」と題した提言で、政府に「産業戦略2040」の策定を求めた。産業全体を見据えた長期的かつ統合的な産業政策を政府が策定すべきだと訴える。社会課題の解決と経済成長を両立させる「勝ち筋」となる戦略分野や目標の設定、さらに産業、技術、エネルギー、国土、人材などで長期的な方向性とロードマップを示すよう求めた。政府はこれらの提言に耳を傾け、日本の新たな成長軌道を描きたい。

経団連は「勝ち筋」となる戦略分野として人工知能(AI)・ロボットや半導体・光・量子、エネルギー、エンタメ・コンテンツ、観光・食、バイオ・ヘルスケア、宇宙・安全保障の7分野を候補とした。中でも最も深刻な課題は人手不足で、AI・ロボットなどのデジタル技術の活用が有効とみている。政府には政策総動員の施策を求めており、財政規律にも配慮しつつ有効な対策を講じてほしい。

安価で安定的なエネルギー供給も政府に求めている。エネルギー安全保障と脱炭素を実現する上でも、再生可能エネルギーを主力電源化しつつ、ベースロード電源として原子力発電所を最大限活用することが求められる。生成AIの普及により、電力消費の急増も想定される。

安価な電力の安定供給は産業競争力に直結するだけに、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働や、政府が24年度に見直す方針の「エネルギー基本計画」の行方を注視する必要がある。35年度以降の電源構成目標をどう設定するかが焦点となる。エネルギー自給率の向上により、貿易収支が是正され、円安基調も修正に向かうと期待したい。

(2024/5/3 05:00)

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