(2024/6/5 05:00)
自動車の量産に必要な「型式指定」をめぐり、認証不正が相次ぎ発覚した。トヨタ自動車など国内主要5社の計38車種に及ぶ。日本のモノづくりへの信頼を大きく失墜させかねず、業界を挙げた再発防止と信頼回復を急ぎたい。今回の不正は国土交通省から調査を求められて発覚しており、各社の自浄能力も強く問われる。各社はガバナンス(企業統治)改革を急ぎ、基幹産業に求められる重大な責務をいま一度銘記する必要がある。
不正が発覚したのはトヨタ自動車、マツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキの5社。国土交通省はダイハツ工業による大規模な認証不正を受け、自動車メーカーなど85社に社内調査を求めていた。結果、5社の計38車種が国の基準とは異なる方法で認証試験を行っていた。85社のうち17社が調査中で、不正がさらに拡大しないか懸念される。
認証不正は2022年以降、日野自動車やダイハツ工業、豊田自動織機のトヨタグループで相次いだ。その不正が主要メーカーへと拡大した事態を重く受け止めたい。国交省は4日にトヨタ自動車、他の4社も順次、立ち入り検査を行う。原因を究明し、国交省は今夏にも効果的な不正防止策を打ち出したい。
認証不正の中には、国の要求基準より厳しい条件で行った試験もあるという。悪質性は低いものの、法規を順守する意識が低かったと言わざるを得ない。ただ相次ぐ不正の背景に、認証制度自体に問題がなかったのかも検証する必要があるだろう。
国交省は、不正があった38車種のうち生産中の6車種を対象に、安全基準の適合性を確認するまで出荷を停止するよう指示した。幸い、各社は安全性基準はクリアしているようだ。ただ出荷停止が長引けば、サプライチェーン(供給網)や地域経済に少なからぬ影響が及ぶ。ダイハツ工業などの減産の影響で、1―3月期の実質成長率がマイナスに転じた経緯がある。斉藤健経済産業相は4日の閣議後会見で、部品メーカーなど供給網への影響を調査する考えを示した。日本経済への影響が最小限に抑えられるかも注視したい。
(2024/6/5 05:00)