社説/子ども・子育て支援法 効果の検証と社保改革の推進を

(2024/6/6 05:00)

子ども・子育て支援法などの改正案が5日の参院本会議で可決、成立した。岸田文雄政権の「異次元の少子化対策」が盛り込まれ、若者・子育て世代の所得を伸ばす施策が講じられる。若年人口が急減する2030年代を前に、少子化に歯止めがかかると期待したい。ただ社会保障制度改革を後回しし、給付が先行する形になる。政策効果はもとより、財源確保に向けた歳出改革が進むかも注視したい。

法改正に伴い、10月から児童手当が拡充される。支給期間が高校生まで延長され、第3子以降は給付額を従来より増額。3人以上の多子世帯の高等教育費は25年度から無償化し、親の就労を問わずに利用できる「こども誰でも通園制度」を26年度から実施する。男性の育児休業取得も推進し、若者が安心して子育てできる環境を整える。

ただ児童手当に所得制限を設けないなど、歳出にメリハリが付いていない施策もある。政府はこれら施策の効果を定期検証し、アップデートしてほしい。

政府は少子化対策の財源として28年度までに年3・6兆円を確保する。歳出改革で1・1兆円、既定予算の活用で1・5兆円、子ども・子育て支援金で1兆円を賄う。必要に応じて、つなぎ国債を発行するという。

岸田首相は支援金について、社会保障改革と賃上げで「実質負担ゼロ」になると強調する。だが賃上げ額は業種や企業規模で異なる。そもそも支援金は収入に応じて徴収額が異なり、現役世代の負担増が懸念される。

歳出改革も容易ではない。24年度の「診療・介護・障害者」報酬の改定も全体では増額で、社会保障費の削減の難しさを浮き彫りにしている。高収入の高齢者を念頭に、医療費の窓口負担を見直すなど、全世代型社会保障制度の構築を急ぎたい。

政府は30年代初頭に子ども・子育て予算倍増を目指しており、長期的にはさらなる財源が必要になる。「金利のある世界」で高利回りの国債に依存すれば将来世代に禍根を残す。経団連が指摘するように、将来の消費税引き上げも選択肢の一つとして、官民で議論を深めたい。

(2024/6/6 05:00)

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