(2024/6/11 05:00)
東京証券取引所に上場する3月期決算企業の定時株主総会が下旬に本格化する。株主提案を受けた企業は過去最多を更新したようだ。だが企業は目の前の株主への利益還元ばかりでなく社員や取引先など多様なステークホルダー(利害関係者)に目配りし、中長期の成長投資を通じて企業価値を向上させたい。
株主提案は近年、増加傾向にある。2021年の48社が23年には90社(三菱UFJ信託銀行調べ)に倍増。24年は90社超と過去最多となる。アクティビスト(物言う株主)や機関投資家が、自社株買い・増配などの株主還元や、取締役の選任などの提案を増やしたとみられる。
23年度の自社株買いは総額10兆円超と過去最大を更新し、2月には株価がバブル後最高値を更新した。株価の上昇は歓迎だが、目先の株価や株主利益に過度に目配りしていないか懸念が残る。積極的な自社株買いは、東京証券取引所が23年3月に資本効率の改善を求めたことが背景にある。株価純資産倍率(PBR)が1倍を割る企業に改善を求め、資本収益性で海外に見劣りする日本株の魅力を向上させるという狙いを込める。
ただ自社株買いは財務への効果が一時的とされる。企業は持続的な成長に向けた成長戦略や人的投資について、株主と十分に対話することが求められる。24年度から国に提出する四半期報告書も廃止された。短期的な株価や株主利益に目を配りがちになる弊害を是正する契機としたい。成長投資を推進し、持続的な賃上げを起点とする経済好循環を回すことが求められる。
上場企業の24年3月期決算は円安を追い風に、当期利益が3年連続で過去最高を更新し、24年春季労使交渉(春闘)も33年ぶりの歴史的な賃上げ率を実現する。利益還元が株主から従業員に広がったと評価したい。
上場企業による政策保有株の売却が進み、安定株主が減ったことで株主総会の緊張感は高まる。自動車メーカーの認証不正問題や損害保険会社による企業向け保険の価格調整問題など、業界の信頼回復に向けた株主との対話も深めてもらいたい。
(2024/6/11 05:00)
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