(2024/6/12 12:00)
ボルトメーカーの中野ボールト工場(福岡県大野城市、中野慎一社長)が設備投資を進めている。加工精度の向上や納期短縮、省力化などが目的だ。複雑形状や高強度といった多様な要望を実現する、熱間鍛造によるオーダーメード対応が同社の強み。設計から手がける一貫生産体制や環境対策の強化も図り、多品種少量への対応力を高める。設備導入を契機にした工場レイアウトの改善や、会社の特徴を踏まえた今後の設備投資も計画する。
ボルトの材料となる金属の棒を、一定の長さで切り分ける新たな切断機を2024年に導入した。丸鋸による切断で、対応する直径の幅を広げた特別仕様だ。複数の棒をセットでき、規定本数を切り出す作業を自動化した。切断面の形状や表面の品質が向上し、その後の工程に好影響を及ぼす。
中野ボールト工場は従来、プレス機でも切断してきた。1本ずつ人手で機械に押し込む。多用する材料は1本10キログラム程度。プレス機で使う刃物は棒の直径に合わせて交換が必要になる。刃物は技術者による自作や研磨などのメンテナンスをしてきた。
新たな切断機導入に合わせて、工場内の設備や資材のレイアウトの見直しにも取り組む。切断機近くに材料の棒を置くことで、物の移動を短くするなど作業の効率化を進める。
加工精度向上のために24年に導入したのが数値制御(NC)旋盤。同機の導入には技術伝承の役割も持たせ、入力データにベテラン技術者の経験を反映させる。中野社長は「職人技をプログラム化し、呼び出せば同じ加工ができるようにしておく」と説明する。ベテランの在職期間を考慮して技術伝承は計画的に取り組む。NC旋盤は今後も増設する考えだ。
放電加工機による金型加工を始めたのは数年前。急な受注の場合に金型加工工程の順番を入れ替えることなどが可能になり、工程の柔軟性が増した。中野社長は「納期コントロールがしやすくなった」と手応えを見せる。今後も放電加工機を増やして金型の加工能力を高める。設置する恒温室は完成している。
そのほか同社では、ネジ切り加工機や曲げ加工機も最近導入した。機種の選択では製造コストや使いやすさを重視した。
熱間鍛造については電気炉やプレス機の導入を検討している。プレス機については自社に合う、古い機械を探す方針だ。
中野社長は「形状、強度、精度などの付加価値が高いボルトを増やしていきたい」と意気込む。
(2024/6/12 12:00)
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