(2024/6/14 12:00)
―まず、ワオキツネザルに扮(ふん)した理由を教えて下さい。
「バンド活動中の2013年、開設した動画配信番組の進行役がWoWキツネザルだった。一番好きな動物がワオキツネザルなので、まねた。バンドは解散したが、周囲の勧めでWoWキツネザルとして司会の仕事を続けている」
―環境問題との出会いは。
「キャラクターを深めたいと思い、17年にワオキツネザルが生息するマダガスカルに行った。大自然を想像していたが、一部しか緑が残っていなかった。現地の人が生活のために森林を伐採して燃料にしているからだ。私たち日本人が現地の人に対し、環境のために木を切るなと言えない。だが、大好きな動物たちが絶滅するかもしれない。やるせなくなった」
―執筆の経緯は。
「帰国後、環境問題の啓発を始め、19年に本書と同名のイベントを開いた。『絶滅を体験できる』と言えば、環境に無関心な人も参加してくれると思った。エンターテインメントは間口を広げられる。イベントは原点であり、書籍にした」
―野生動物を食材にして食べ切れない料理を提供するなど、環境破壊に加担する飲食店が登場します。架空ですが、平然としている店主や客に恐怖を感じました。
「風刺や皮肉をやりたかった。だから、ぞっとする違和感をちりばめた。環境問題を知らないとダメだ、自分は何ができるのかと考えるきっかけになってほしい。読者から『この登場人物は自分じゃないか』『現実との境界線がなくなり、怖かった』と言ってもらえた」
―店名やメニュー名も環境関連のニュースを連想させます。調べ直したくなりました。
「激辛ラーメンを食べるとむせる。これは山火事の煙で息ができない健康被害と共通しており、組み合わせようと思った。このように生まれたアイデア一つひとつを広げた。専門家にもこんな表現方法があるのかと思ってほしかった。読者に『私もそう思います』と言ってもらえる共感が重要。一方的に『伝えた』ではなく、どうすれば『届く』のかを意識して執筆した」
―大人向けの本という印象を持ちました。
「次世代のために環境を守るべきだと言うが、大人が自分たちの問題として解決しないといけない。異常気象によって生活の快適さが失われ始めている。生物多様性の損失によって食料価格が高騰し、身近な家計に影響が出ている。また大人は、自然に触れられない子どもがかわいそうだと嘆く。そもそも自然がなくなった世界で遊んでいないのだから、子ども自身は悲しいとは思わない。傷つくのは、自分と同じ体験をさせてあげられない親だ」
―読者へのメッセージをお願いします。
「企業が社会を動かしているから、私たちは快適に過ごせている。だからこそ、社会や環境に責任を持っている。自分たちが与えている環境負荷を理解し、その負荷を減らしつつ、多くの人や生物、自然が幸せになれる方法を一緒に考えたい。次は『絶滅回避レストラン』を執筆したい」
(2024/6/14 12:00)
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