インタビュー/協和キリン執行役員SCM部長・松本篤志氏 材料代替難しく需要予測共有

(2024/6/20 12:00)

―製薬産業における調達のリスクとは何ですか。

「医薬品は原材料が不足しても代替品を使って製造するのが簡単ではない。原料や製造方法が変われば、各国の規制当局から承認を得なければならないからだ。特にバイオ医薬品は難しく、細胞を培養する培地が変わると同じ方法で製造しても同じ物質とみなされない。需要予測に沿った在庫の確保が重要だ」

―需要予測が変わるタイミングは。またどのような対策をしていますか。

「適応症の追加と販売地域の拡大は、対象患者が広がり需要が変化するタイミングだ。患者が増える分だけ供給量を増やすのは十分ではなく、安全在庫をどれくらい増やすかを含めて供給計画を見直す。グローバル製品の場合は国ごとの予測から全体の供給を考えることが求められる」

―将来的にサプライヤーを増やすといった対応の可能性は。

「製造に使う培地は協和キリン用にカスタマイズされたものもあり、そういったものは供給元を複数化するのは難しい。長期的な需要予測を共有して安定供給に協力してもらうのが現状の策だ。サプライヤーの原料確保が難しくなった場合、複数の製薬企業に影響が出ることは考えられる。その際に、例えば品目によって命に関わるものなど重要性や緊急度を理解してもらい、供給に影響がないよう調整している」

  • バイオ医薬品の製造工程で使われる培養槽。細胞を培養するには培地が不可欠だ

―感染症の流行など危機への対策は。

「サプライチェーン(供給網)全体のリードタイムをいかに縮められるかがポイント。医薬品は品目にもよるが供給までのリードタイムが長い。製造や試験の時間は縮めるのは難しいが製造計画立案や文書作成などを少しずつ削ることはできるだろう。各部門で迅速な情報共有など継続的な取り組みで危機への対応力を上げていく」

―将来的に対応が必要なポイントは。

「国内では医療機関への輸送という点で物流の問題をしっかり見る必要がある。バイオ医薬品輸送における管理も厳しい。パートナーの医薬品卸企業ともしっかりコミュニケーションを取り、協力していくことが重要だ」

(2024/6/20 12:00)

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