社説/株主総会で浮かぶ課題 緊張関係も対話で戦略の共有を

(2024/7/2 05:00)

6月の定時株主総会は、株主による経営陣への監視が一段と強まった。株主還元にとどまらす、資本効率の改善や不祥事に伴う経営陣刷新など、踏み込んだ提案が目立った。政策保有株の売却が進み、安定株主が減少したことが背景にある。緊張感が増す株主総会により、上場企業の財務やコーポレートガバナンス(企業統治)がこれまで以上に強化されると期待したい。

他方、政府は株主総会前の有価証券報告書の開示を検討している。海外投資家を日本市場に呼び込む狙いで、上場企業への監視がさらに強まる可能性があることも留意する必要がある。

アクティビスト(物言う株主)らによる株主提案は90社超、議案で330超と過去最多だった。ダイドーリミテッドの総会では、株主提案で求められた取締役候補6人のうち3人が選任された。物言う株主の影響力が増している。上場企業の保有株式に占める政策保有株比率が低下していることが背景にある。90年度の50・5%に対し22年度は11・7%まで減った。東京証券取引所が23年3月、上場企業に資本効率の改善を求めたことで同比率はさらに低下しよう。

今総会では「型式指定」をめぐる認証不正で自動車メーカートップの謝罪が相次ぎ、トヨタ自動車・豊田章男会長の取締役再任への賛成率は71・93%と23年総会より約13ポイント減った。株主は、中小企業への価格転嫁に応じない企業などへの監視も強めている。当該企業はこれら株主の指摘に真摯(しんし)に耳を傾け、経営改善への歩みを進めてほしい。

政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針)」で、株主総会前に有価証券報告書を開示するための環境整備を推進することを盛り込んだ。現在、上場企業の8割以上が総会日か翌日の開示で、実現すれば株主の監視がさらに強まりそうだ。ただ企業のステークホルダー(利害関係者)は株主だけではない。従業員や取引先に資する人的・成長投資も推進する必要がある。株主とは緊張関係を保ちつつも、企業価値向上につながる中長期の戦略を共有する対話こそ重視したい。

(2024/7/2 05:00)

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