社説/東南アのBRICS加盟 マレーシア申請で相次ぐか注視

(2024/7/31 05:00)

東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国が、BRICSへの加盟に意欲を示している。BRICSは南米や中東、アフリカへ加盟国を増やしており、経済協力の枠組みを拡大する狙いとみられる。一方、BRICSに加盟する中ロはASEANを取り込み、多極的な国際秩序の形成を狙う。だがASEANは政治的に中立国が多く、中ロと思惑が異なる。日本はASEANから選ばれる国になるよう引き続き関係強化を図りたい。

ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成するBRICSに、2024年からイラン、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピアが加盟。ASEANではマレーシアが28日に加盟申請を発表し、タイも加盟の意向を示す。ラオス、カンボジア、ベトナムなども加盟に関心があり、BRICS勢力がどこまで拡大するが注視したい。

中ロは、BRICSの拡大を国際秩序の多極化につなげたい意向とみられる。だがASEANは植民地時代を経験し、第二次世界大戦後に独立してから中立を貫いてきた。BRICSへの接近も、実利主義の等距離外交にとどまると期待したい。

ASEANはインド太平洋の安全保障上の要衝でもある。23年末の日ASEAN首脳会議では覇権主義的な中国を念頭に、経済と安保で連携を強化する声明を採択した。だが、ASEANは中国と経済の結び付きが強く、名指しで非難することはなかった。ASEAN各国はBRICSに加盟しても、中国配慮をさらに強めてはならない。

ASEANの23年貿易額の約2割を中国が占め、日本は6%台にとどまる。日本はASEANに西側諸国の価値観を押し付けず、デリスキング(リスク低減)の認識を共有し、経済安保の観点から中国依存を緩和したい。ASEANとBRICSの貿易が拡大すれば、日本への依存度が低下しかねない。日本はこれまで政府開発援助(ODA)でASEANの成長を支えてきたが、対等な立場で供給網の強化やインフラ整備、気候変動対策などに取り組み、日本の存在感を高めていきたい。

(2024/7/31 05:00)

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