社説/日銀が利上げ決定 円安是正へ一歩、米利下げ期待

(2024/8/1 05:00)

日銀は31日、「追加利上げ」と「国債買い入れ減額」を実施すると発表した。歴史的な円安に伴う物価高に歯止めをかけるため、金融引き締めを進めるものと評価したい。ただ利上げ幅を小幅にとどめ、市場への影響にも配慮したため、円安是正は一歩前進したに過ぎない。短期的には米国の9月の利下げ、中長期的には日本企業の構造改革を進めることで、円の購買力を引き上げることが求められる。

日銀の利上げは、マイナス金利政策を解除した3月以来になる。3月に0―0・1%程度とした政策金利を0・15%程度引き上げ、0・25%程度とした。市場では、米国による9月の利下げが想定されている。日米金利差の縮小を背景に、過度な円安・ドル高の流れが変わり、停滞する個人消費が回復に向かう契機になると期待したい。

政策金利の引き上げ幅は0・25%刻みが一般的だが、日銀は今回0・15%に抑え、企業や家計への影響に配慮した。2024年春季労使交渉(春闘)の賃上げ率は33年ぶりに5%台を達成したが、実質賃金は5月まで26カ月連続で前年比マイナスが続く。日銀が抑制的な利上げにとどめたのは適切な判断だが、円安是正への効果は限られる。市場では、日銀が年内に追加の利上げを実施するとの予測がある。エコノミストの間では、実質賃金が年内にプラス転換するとの見方が多く、こうしたタイミングを捉えて金融正常化の歩みを進めることが求められる。

長期金利の上昇を抑えるため月6兆円規模で実施している国債買い入れは、26年1―3月に月3兆円程度となるよう段階的に減らす。金利の決定を市場に委ねる考え方は適切だ。日銀は保有国債の償還もあり、581兆円(23年末)の国債保有残高が減少に向かう。バランスシートが改善される効果もある。

日銀の今回の決定が経済に及ぼす影響は少ないとみられる。だが政府も企業も「金利のある世界」の本格的な到来に備えておきたい。資金調達や政府の国債費の負担増を見据え、企業は収益基盤の強化、政府は財政健全化への取り組みを急ぎたい。

(2024/8/1 05:00)

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