6月の実質賃金、1.1%増 27カ月ぶりプラス

(2024/8/6 17:00)

夏季賞与・春闘が押し上げ

6月の実質賃金が27カ月ぶりにプラスに転じた。夏季賞与など特別給与の大幅増が名目賃金を押し上げた。高水準の賃上げ妥結が相次いだ春季労使交渉(春闘)の結果も反映されつつある。

厚生労働省が6日発表した毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、物価の影響を加味した6月の実質賃金は前年同月比1・1%増だった。前年同期を上回るのは同0・6%増だった2022年3月以来。ただ6月は特別給与の伸びという一時的な要因が大きく、消費者物価も高止まりしている。このままプラス基調が定着するかは不透明だ。

名目賃金にあたる1人当たりの現金給与総額は同4・5%増と30カ月連続で増加した。調査対象となる企業のサンプル入れ替えの影響を受けない共通事業所ベースでも同5・4%増だった。

中でも特別給与が同7・6%増と高い伸びを示した。夏季賞与を支払う事業所が増えたことや、23年は7月に支給した事業所が6月に前倒す動きがみられるという。

基本給にあたり、賃金基調を把握する上で注目される所定内給与も同2・3%増と29年8カ月ぶりの高水準だった。一般労働者の所定内給与は同2・7%増で、94年の調査開始以来、過去最高の伸びとなった。パートタイム労働者も同4・9%増で36カ月連続で増加した。

実質賃金の算出に用いる6月の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年同月比3・3%上昇で5月から横ばいだった。消費者物価は政府による電気・ガス補助金終了に伴い、7月以降、上昇率が高まるとみられたが、8月から10月まで再開されることになった。これによる物価押し下げ効果に加え、過度な円安が是正に向かい輸入物価の上昇が抑えられれば、実質賃金のプラス基調が継続する可能性がある。

ただ家計の節約志向は根強く、実質賃金の増加が個人消費を喚起するかは見通せない。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは実質賃金が安定的にプラス転換するのは「9月」との見方を示した上で、急激な株安は個人消費の下振れリスクを高めると指摘。消費が持ち直すには、時間がかかるとしている。

(2024/8/6 17:00)

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