社説/首相の中央アジア訪問 「経済安保」と「商機拡大」に期待

(2024/8/9 05:00)

岸田文雄首相は9―12日の日程で中央アジアを訪問し、天然資源が豊富な同地域への新たな協力の枠組みを打ち出す。日本企業約50社も同行する。官民一体で、脱炭素化や物流網の強化などで協力し、関係の強化を図る。日本企業の商機の拡大や、天然資源をめぐる経済安全保障が強化されると期待したい。

岸田首相は、カザフスタンで開かれる中央アジア5カ国(カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)との首脳会合に臨む。脱炭素化や物流網の強化、人材育成など、幅広い協力関係を築くという。日本企業と現地企業によるビジネスフォーラムも開催される予定で、日本企業は市場開拓につなげたい。

日本は再生可能エネルギーなど脱炭素技術で協力するほか、中央アジアの各国間の物流網を整備し、ロシアを経由せずに鉱物資源などを輸送できる体制を目指す。IT人材の育成でも協力し、関係強化を図る方針だ。

中央アジア5カ国は旧ソ連諸国の一員で、ロシアと結び付きが強く、接近してくる中国とも貿易が盛んだ。ただ欧米から経済制裁を受けているロシアや、広域経済圏構想「一帯一路」が停滞する中国とは別に、貿易ルートを拡大したい思惑がある。ウクライナに侵攻するロシアとは距離を置きたいともされる。

日本と中央アジアは2004年に対話の枠組みを立ち上げ、今年で20年になる。節目の年に対話の枠組みが首脳レベルに格上げされた形だ。これを機に中央アジアと中ロの関係を多少なりとも弱めつつ、経済安全保障を強化することが求められる。

中央アジアは、アジアと欧州を結ぶ地政学上の要衝であるほか、ロシアや中国、イランに囲まれた地域でもある。米国もこの地域を重視しており、23年9月にはバイデン米大統領と中央アジア5カ国首脳が会談し、ロシアと中国をけん制している。

日米は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化」には、中央アジアとの関係強化が不可欠とみる。岸田首相の今回の訪問により、関係がさらに深まると期待したい。

(2024/8/9 05:00)

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